第13話 俺
俺はバーレッド・テイル。アーバン王国辺境伯の三男だ。
将来は兄達のように強い騎士になりたい。騎士ではないが物語に出てくる勇者が俺の目標だ。勇敢に魔物から人々を守る姿、人々が心から安心して任せられる存在に憧れる。
俺には2人の兄がいる。2人とも優しくて優秀、そして強い。
年は離れているが、厳しく、時には甘やかしてもくれる。1番近くにいる目標でもある。
だからこそ、早く兄達の様に剣の訓練に加わり腕を上げたい。
だが、皆口を揃えて
身体が大きくなってから。だの、先ずは体力をつける事!だの、剣を握ることすら許してくれない。
両親は同世代の子と遊んで欲しいと思っている様だが、そんな時間があるなら鍛えたほうがマシだ。しっかりと勉強もしているし将来困ることはないだろう。なにより同世代と話していても詰まらないのだ。剣士ごっこなどくだらない。本物にならなきゃ意味がないんだ。
そう、以前までの俺は剣を握れない事を不満に思い、両親が俺に同世代の友達がいない事への心配も無視して早く一人前の騎士になる事だけを考えていた。焦っていたんだ。
しかしそんな焦りや不満をなくすことが出来たのは、彼らと出会ったからだ。
ーーーーーーー
それはある時、気まぐれで子供の用品店を執事のアークとフラッと立ち寄った時だった。
異質?とは違うが何だか気になる家族が入店して来た。
執事のアークも気になる様でチラチラと気付かれない様に見ている。
するとその子供達がなんだかドヤ顔を始めた。
「どう?かわいい?」目をきゅるん
「かっこいいだろ!目指せ!Sランク!」ドやぁ
!!!!!
なんだあいつ!Sランクだと!伝説級だぞ!よく言えたな、しかも大声で!
そして何故か彼らの親も頷いている。何故だっ!親バカか?
責めてA級までなら目標にするのは分かるが。
唖然と呆けていると、もうその家族が出て行くところだった。何故かこのまま行かせたくなく…
「おい!お前!そこのちっこいのと剣のバッグのっ!!」
くそ!言い方間違えた。なんで俺はこんな言い方にばっかになるんだ。
幸い2人とも気づいて振り向いてくれた。
彼はゴウと言うらしい。
話をして行くと、俺の目標をいい目標だと言ってくれた。そして、剣と魔法で戦うと言っていた。いやいやいや、それは勇者の戦い方じゃないか。
話していて気づいたことがある。なんだかこのゴウという奴は少しズレている?気がする。俺のことも知らないし、世間知らずとも言えるか?だが話していて大人っぽさを感じる。
なんだか気になる奴だ。
そして正直このチビ…いやセイという妹。
…可愛すぎないか?
兄と似た大人っぽい雰囲気もあるが、なにか生意気な雰囲気もある。面白い。構いたくなる。
このまま此奴らと別れるのは嫌で明後日街を紹介する、と約束をつけた。
楽しみだ。
戻ると父上、母上と兄様達へ執事から今回のことを伝えられたそうだ。
友達がいなかった俺が楽しみだと言うことを知り、ぜひ会いたいと家に招くことになった。
がしかし招いた当日、事件が起きた。
父上の執務室に入ろうとした途端、2人が、結界に拒まれたんだ。
以前父上から、ここの部屋には何か偽装している者、殺傷能力のある魔道具を持っている者などは、この結界に拒まれるようになっていると伝えられた。
俺は何故今彼らにこの結界が発動したのか訳が分からなかった。
騎士達が彼らを取り囲む。刃を向けている。
「お!おい!そいつら2人は俺の友達なんだぞ!」
咄嗟に叫んでいた。
そうだ、彼らが悪意を抱えている様に見えない。けど何か2人は焦っている様だ。
何かあるのか?
すると、突然
絵物語でしか見たことのない2人の姿が彼らを庇う様に目の前に現れた。
っっ転移…?
すごい威圧感だ。怒っている。
緊張がさらに高まる
正直俺には、何が何だかわからない。
父上は早急に騎士を下がらせ話をすることを試みた。
事態が事態だ。勇者様と聖女様、2人とも怒っている。この方達には誰も太刀打ち出来ないだろう。
関係性を父上が問いたが、敵か味方か分からない今は明かさないと言う。
それもそうだろう。
そこで父上はこの結界を渡した。何やら製作者が、敵ではないと言うことの証明になるそうだ。
挙がった名前はレグルス。
賢者様だ。わかった途端勇者様が耳に手を当て連絡を取り始めた。
あの魔法をこうも簡単に使うとは。
魔力が莫大に必要なことはもちろん、コントロールも難しい。滅多に出来るものではない。
それを簡単に使う姿に、今我々が誰を相手にしているか思い知らされる。
連絡を取り終えた様だ。
するとセイがキョトンとした顔で
「お父さん、レグルスって誰?
…あっ」 「ヲイ」
っっっっお父さん?!?!
ゴウが呆れた顔でセイを見ている。
どう言うことだ?勇者様に子供がいたなんて聞いたこともないぞ。
勇者様がこちらに悪意は無いことがわかるとゴウとセイに変装を解いていいと言う。変装…
すると2人は身に付けていたネックレスを取る。
姿が変わった。
2人とも勇者様の紫の目、ゴウなんて勇者様と瓜二つだ。
セイは聖女様の髪色。か、かわいい。
2人とも美形すぎる。
話が家も、なかなか貴族の中でも端正な顔立ちだが、彼らは神秘性を感じる美しさなんだ。
…だが今は正直それじゃ無い。
はずかしい!本人の目の前で目標宣言してしまった。
その後は相互の誤解が解かれ緊張状態が溶け、俺がうっかり約束のお菓子なんて話してしまったら聖女様がセイの首根っこ捕まえてガミガミ言い始めた。
勇者様の家族と聞いて驚いたが、こんな風に怒られている所をみて、かけ離れた存在よりか、親近感が湧いた。
その後は、俺が領地を案内した。
遊園地では驚いた。寝始める兄弟。つまらないのかと思い残念に思ったが違ったらしい。
2人は最高に気持ち良さそうにしている。
俺も試してみたがたしかに気持ちいい。
本当は、勇者様の子だから遊園地で物凄い動きをするのかと思っていたが、中々のんびりしている奴らだった。
性格は想像とは色々…いやかなり違ったがそれでも俺は此奴らをもっと知りたいと思う。
彼らと一緒にいたうさ耳の従魔…巨大化したが、あれ伝説のスキルじゃ無いか?
分かってなさそうな彼らに呆れるがそこがいい所だ。此奴らと一緒にいたら楽しい。飽きない。
彼らは今魔法を鍛えているそうだ。
あれ?セイは魔法扱えないんじゃ無いのか?とも思ったが突っ込まないことにした。
なんでもコントロールがうまく出来る様に毎晩、体に魔力を巡らせているらしい。
勇者の子だから剣を習っているかと思ったが以前、まだ剣を習っていないと言っていた。
剣を本格的に扱うのは、体ができてからでよくて、まずは動けるようにすることが大事と言っていた。
そんな膨大な力を持っている彼らでもまず出来る事から焦らず努力している事をしり、自分の考えを改めた。
まず俺に出来ることをやってみよう。
兄達と同じ土俵に上がらなくてもいいんだと改めることができた。
剣も魔法もやってみよう。
まずは、出来ることから。一歩一歩焦らずに。
あいつらと一緒にいても恥ずかしく無い様に。
そして勇者様の様に誰かを守れる存在に。
…
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