第1話 家族で転生してたみたいです。

ざざざざざざっ


その日は晴れた天気だった。

私は家族と愛犬と夏の避暑地の定番、長野県へ車で向かっている途中だった。ちょうど天気も良いため、標高が高く開けた広場でランチを取る事にした。

しかしその目的地まで車で山道を登る際中、右カーブの道を進み始めた直後、反対車線下りの車が勢いよく私たちの車体に激突。

そのまま、私たちは車ごと山の斜面へと転がり落ち命を落とした。


それが最後の前世の記憶だ。



「いやいやいやいや!!」

叫んだのは父。泥だらけでだがナイスな突っ込みをしている。

「くくくく…うっ頭いてェ…おぅ血出てたわ」

笑いながら血をだして呑気な発言をしているのは兄。

「あらあらぁやっぱり運命だったのねぇ」

こちらも腕から血を流しながら、魔法で簡単に兄と自身の傷を治し、状況とは真逆の発言をしているのは母。

「あははは!いやー焦ったねマジで。生きてて良かったー!あ、一回死んでるかっ!!!」

こちらは私。父に抱きしめられ守られていたため無傷。


そう。私たちは家族全員で転生していたらしい。


前世地球にて車の衝突事故で一家もろとも命を落とした私たち家族は、

この異世界で馬車にて突然のドラゴン出現と衝突により山から転がり落ちた衝撃で、全員前世の記憶が戻ったらしい。

父の咄嗟に行った不思議な魔法で、命を落とさずに済んだ。

前世では、父55才、母50才、兄25才、私22才 愛犬は8才

今世は父25才、母22才、兄5才、私3才、愛犬まだいない


そんな私たち、魔法のファンタジー世界で記憶が戻って早々、遭難の危機っぽいです。


...

私たち家族は小国で父は宿を経営していた。

父の名は、ライゴウ 遠い祖先が東方の血を引くため名残で独特な名前なのだと。

母の名は、メイ 本名はメイ・クイーン 他国貴族の出だが駆け落ちしたのだとか...

しかし今の母は「なんでジャガイモなのよっ」とつぶやいている。不満そうだ。

兄の名は、ゴウ なんか強そうな名前だな、とニヤニヤしている 

私の名は、セイ ゴロがいいのとかわいい名前だからと付けられた。中性的な名前に憧れあったからうれしい名前だ。


そんな宿屋で、私も兄もよくお手伝いという名の遊びをよくやっていた。

だがここ最近隣国との関係が悪くなり、近いうちに戦争が起こるかもしれないと宿に泊まる人々の噂を耳にした。

宿は冒険者や旅人などが多く情報も早い。父はそれを知って以降、早急に宿を閉め関係が悪くなっている国の反対側、のその奥

中立国家で大国のジニアール大国へと移り住むことを決め私財を売り払い、旅に出る準備をした。

国を出て約一週間。父が馬車を引き、山沿いを通りながら魔物呼ばないようにお香をつけ警戒しながら進んでいた。私たちが小さいため比較的安全なルートを選んでいる。1か月も護衛を雇う余裕もないが、父も母も腕っぷしに自信があるのからと家族のみで進んでいく。


ジニアール大国の手前、アーバン王国までは予定では約1か月かかる。この国は10年前戦争に負けた敗戦国だが近年は発達を遂げて安定してきていると情報を耳にしている。また来る者は拒まずな姿勢で国の発展に役立つ者へは寛容だ。比較的治安も良いとのことなので、少し滞在してから大国へ向かう計画を立てた。


…立てていたのだが


キエエエエエエェェェェェッ


突然、魔物の悲鳴が響き渡った。

と思った瞬間、何か大きな黒い塊が低空飛行で飛んできた。


一瞬だった。

その何かが通り過ぎたと上を見上げながら思った瞬間、その何かの尻尾が馬車の屋根にぶつかった。


その勢いで馬車は思いっきりグラつき山の斜面へ落ちた。

私はグラつきで馬車から宙へ放り投げだされ、そこから意識は無くなった。




そして冒頭に戻る。

「う~んと状況的にお父さん!ありがとう!ナイスキャッチだと思う!」

盛大なグーサインを父に送る。きらっとスマイルもつけちゃうぞッ


「本当に焦ったんだからな?後ろ見て馬車がやばいッと思ったら、ちんまいお前がぐらついた馬車からポーンッて宙を飛んでったんだから…っま無事ならいいや。

ゴウ!お母さん!二人は無事か?」父は私を大事そうに抱えて離さない


「おお。体はお母さんが庇ってくれたから大丈夫だけど、驚いたな」

「私ももう傷は治したから大丈夫よ。びっくりしたわねぇ…ねえでもこれって


皆せーので言うわよ」

と母がキリッとした顔で皆と目を合わせる

そして「行くわよッ」と合図をし、


せーの「「「私たち(俺たち)異世界転生しちゃってる!!!???」」」


「いや、わからんて。」

父が冷静で残念な者を見るような目で弱弱しく突っ込んだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る