その10「定期テストなんかより一緒に登下校したい!」
結局。
後日談というか今回の落ち。
定期テストが始まるまでの数日間は特に一緒に帰るわけでも、一緒に昼休みを過ごすわけでもなく別々に過ごしていた。
もちろん、クラスの皆にも本格的に――という意味で付き合い始めたとは報告もしていなかった。相手も相手で、積極的にはなってはいたが出流の様な性格の人間に茶化されるのも嫌だろうし、あまり話を大きくするとこないだの変な女子に絡まれる場合だってある。
それで、個人的には納得していた半面。
付き合ったのに何もできていないという納得いかない気持ちもあった。
「でもなぁ……さすがに、あそこまで熱心にやってるとね。言えるものも言えなくなるよ……」
もちろん、僕が目指していきたいのはなんでも言い合える恋人関係だと昔から思っていたが、まだまだ最初。そういうのは信頼関係が成り立ってきてからだろう。
一か月、半年、一年……そして倦怠期でもある三年目を越してからこそ成り上がれる関係だ。まだまだ一週間程度の僕達がたどり着けるような場所ではない。
「……なにが言えなくなるのかね?」
「まあな、彼女とのあれこれがねぇってはなs……ん? あ⁉」
「ん……どうした、彼女って言ったか?」
「ああ、いやいや、別に何でもナイヨ? 画面の奥にいる彼女がな—って」
「ははっそうか。その気持ちは割とわかるぞ」
「あははは~~」
あぶねえ。
「まあ、いいや。それでテストどうだった、翔?」
「テスト? ああ、まあぼちぼちかな」
「ふぅん……そうか。まあ俺もいつも通りってとこかな~~」
「ははっ、そんなもんだろ……」
すると、一人。
ふわりと香ったいい匂いともにうるさい何かが背後から飛び乗った。
「————もおおお‼‼ 何が普通なんだぁ‼‼」
「っうわ」
「おもっ」
「おい、翔。貴様今なんて言った?」
「あぁ~~何でもない、僕は何も言ってないぞ」
「……空耳か」
「そうそう、空耳だ! 何も楓が凄く凄く重いだなんて言ってないぞ、僕は」
「——一応、私は女だぞ?」
「知ってるぞ?」
「じゃあ、貴様……もう一遍言ってみろや?」
「いやぁ、楓が凄く重いだなんてこと、僕は言っていないって話をだな?」
「あぁん? 今認めたら許す」
「はいごめんなさい僕が言いました。凄く重いのは事実です。楓は去年からかなり太ってます太ってますごめんなさい、事実ですのでごめんなさい」
「てめぇ〇すッ‼‼‼‼」
「あ——待て待て、僕は何もおかしなこと言ってな——ぶごふぁ!?」
隣で腹を抱えて笑ってる出流を横目に僕は両頬に受けた往復ビンタの衝撃で宙を舞っていた。
「あぁ……地球は青かったんだ」
「うっせぇ、翔ぶkkろお!‼」
「待て待てそれ以上は翔が死ぬ‼‼」
「——知るかぁ‼‼」
怒号に慈悲の声がする中。
遠くに見えた地味の心配するような目と目が合って、一連の思い出が走馬灯のように蘇って……
「って勝手に殺すんじゃねえ‼‼」
「うるっさい――‼‼」
「う――――ぶごふぁ!?」
次回、その11「もうすぐ体育祭が……その前にゴールデンウィークだろ?」
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