水の退治屋
「今日だけは協力してあげる」
学校の屋上で星桜と凛、翔月と弥幸が円になってお昼ご飯を食べていた。
星桜と凛はお弁当で、翔月は焼きそばパン。
弥幸はというと――……
「なんで飲むヨーグルトしか持ってきてないの、赤鬼君……」
星桜はお弁当を片手に、隣に座っている弥幸をジトッと見た。
「美味いから」
「好きなのはわかるけど、ご飯はしっかり食べないと体が持たないよ?」
「今まで問題なかったから大丈夫でしょ」
「今までも同じ食生活だったの?! まさか、夜ご飯もヨーグルトじゃないよね?!」
「夜は逢花が無理やり食わせてくる」
「逢花ちゃんナイス」
弥幸の言葉に星桜はガッツポーズをする。
そんな二人の会話に慣れた凛と翔月は、呆れながらも食べ進めた。
「本当につくづく思うけど、赤鬼って残念なイケメンの代表だよね」
「どうも」
「褒めてはいないんだけど……」
肩を竦め、これ以上何を言っても意味は無いと悟った凛は、ふてくされながらもお弁当の肉団子を食べた。
会話が止まったことを見計らい、翔月は弥幸を呼んだ。
「なぁ、赤鬼」
「なに」
「赤鬼の使ってる神力って、俺も使えるのか?」
翔月の質問に星桜と凛は驚き、弥幸は少し時間を置き、「なんで」と一言返した。
「俺も戦えたらって思ったんだ。お前の手伝いも出来るし、もしお前が手の届かないところに妖傀が出現した時も、手分けして戦えるだろ? 二体同時に現れた時も、俺が戦えれば時間くらいは稼げるし」
翔月は言うと、弥幸は視線を落とし考え込む。
そんな時、凛がおもむろに手を上げた。
「それなら、私も参加したい」
「凛? でも、凛はまだ戦闘を見ていないでしょ? 安易に決めたらダメだよ」
凛も翔月の話に乗っかるが、星桜は今までの戦闘を目の当たりにしているため、心配そうに声をかけた。
「私と月宮は運動神経悪くないし、神力さえ使いこなすことが出来れば──」
「駄目」
弥幸は凛の言葉を遮り、二人からの提案を否定した。だが、それは翔月も凛も分かっており、驚きはしなかった。
「確かに危険だし、これから赤鬼には迷惑ばかりかけると思う。それでも、俺は力になりたいんだ。知ってしまった以上、このまま放置なんて嫌だ」
「私も、貴方に救ってもらった。なら、今度は私が他の人を救いたいの。貴方がやってきたように救える想いがあるのなら、助けたい!」
二人は何とか力になりたいと祈願するが、弥幸は一向に頷かない。
星桜も不安げに翔月達と弥幸を交互に見る。
「別に、迷惑とか想いがどうのとか。そういうのはどうでもいいんだけど」
弥幸の意外な言葉に、二人はキョトンと目を丸くする。
「え。それじゃ、何が駄目なの?」
凛がおそるおそる聞いてみると、弥幸が簡単に説明した。
「そもそも、神力を扱える人間は限られてるの。代々受け継がれているとか、その才能に目覚めたとか。色々あるんだけど。多分君達は神力を扱う権利を得ていないと思うよ」
「な、ならどうすればいいの? 私達は貴方が救ってくれたみたいに、今度は他の人を──貴方のことも救いたいの。何か、方法は無いの?」
凛が諦めず、弥幸に乗り出す形で問いかけた。
「方法は無いわけじゃないけど、これはこれでめんどくさいんだよね。それに、君達には難しいと思うよ?」
「難しいって、一体どんな方法なんだ?」
弥幸の面倒くさそうな言葉に、翔月が質問する。
「君達が精神力をコントロールし、神力に近い力を使うには僕の力を分けるしかない。それを僕達の業界では【
説明を聞いた翔月と凛は「じゃあ!!!」と同時に声を出す。だが、弥幸はすぐに察したらしく腕をクロスさせバッテンを作り「却下」と言い放った。
「なんでよ!!」
「めんどくさいのが一番の理由。そして、もう一つの否定理由は、僕の神力を分けるのにも条件があるんだよ。君以外の二人はわかると思うけど、最低条件として、ロウソク訓練をクリアしてもらわないといけないんだ」
ロウソク訓練と聞いて、星桜と翔月は顔を青くした。
この場で唯一わかっていない凛は、二人の様子に首を傾げる。
数秒、翔月は顔を俯かせたが、膝の上に乗せている拳を強く握り、顔をバッと上げた。
「それでも、可能性があるのなら俺はやる。やらせてくれ!」
翔月の瞳に、覚悟の炎が宿る。そして、凛も同じく真っ直ぐとした目で弥幸を見た。
「私も!! その、ロウソク訓練がどのような物か分からないけど、それが必要なら最後まで絶対にやりきってみせる!! だから、お願いします!!」
二人は弥幸に頭を下げ、お願いした。
そんな二人に対して彼はなんの反応も見せず、見つめる。
「……………………はぁ、わかった。今日だけは協力してあげる」
上から目線の物言いだが、それでも翔月と凛は、目を合わせ心から喜んだ。
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