第3話
「「「きゃーーーーーっ!!!!」」」
ジェットコースターの滑走音と共にから女性の悲鳴が聞こえる。
当たり前のことだったから、僕はぼーっとしていた。
「あれっ・・・雨?」
頬についた水滴を手で触ると・・・赤かった。
「うわああああああっ」
怖いことが嫌いな僕は物凄い驚いて、腰を抜かして尻餅をついてしまう。
(うわっ・・・恥ずかしいな僕)
こんな姿を見られたらまた山田くんたちに笑われてしまう。
僕は急いで立ち上がろうとすると、
「きゃああああああああっ!!」
また、女性の悲鳴。ジェットコースターの悲鳴だと思っていたけれど、先ほどのようなジェットコースターの滑走路と乗車部分のローラーが生み出す滑走音が聞こえない。
僕がゆっくりと乗り場の付近を見ると、ジェットコースターが停まっておりざわついている。何んだろうとジェットコースターを見るとそこには不細工な人形が乗っていたように見えた。
なぜ不細工だと思ったか。
それは人間ならありえない方向に頭がねじ曲がっていたからだ。
でもその洋服・・・どこかでよく見た気が・・・。
「山田・・・くん?」
日常に急に現れる非日常は、脳が無理やり日常へと組み込もうとするけれど、辻褄が合わなくなり思考停止に陥るのだと僕は後に思った。山田くんの服を着ていて、気づかなかったけれど隣には血まみれで具合悪そうな橘さんがいれば、それが山田くんでしかありえないのに、それを理解するのにはかなり時間がかかった。
頭の中でそれが山田くんじゃないかと自問して、そんなはずはないと自答して、状況を再度確認して、自問するという自問自答が何度もループされた。
「スリルを十二分に味あわせてあげたわ・・・みんな」
聞いたことのない女の子の声が聞こえた。
聞こえたと言うよりは、心に直接響いたと言った方が正しいのかもしれない。
僕はハッとなって、周りを見渡すけれど誰もいなかった。
この後救急車が到着して山田くんのお父さんの知り合いだと言う大きな総合病院へ緊急搬送された。この時、僕は山田くんが大企業の御曹司だと知った。けれど、医者じゃなくてもわかるくらい悲惨な姿だった山田くんはすでに亡くなっており、橘さんは重傷、そしてその後ろのレーンに座っていた塩入さんも軽傷だった。僕は病院に付き添って、待っている間、謎の女の子の言葉がループしていた。
思ったつもりは無いけれど、もしかしたら、山田くんの態度に腹が立ち、そんなにスリルが欲しいなら、危険なことが起こってしまえとか、さらには・・・死んでしまえ・・・っと願っていたかもしれなくて怖くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます