20話 ダンジョンの秘密
この2週間、特に連絡がなかったために、俺たちなりに街を見回りしてみたり、【ダンジョン防衛隊】の後を付けたりしたが成果はなかった。
一つの班を見張っていれば必ず【
給料が払われない俺達にとっては死活問題だ。
次はどんな方法で【
「三人寄れば文殊の知恵と言うが、全員が無能だと只の置物だと思う私だ」
「……
そんなやり取りをしていると、
「貴方をイメージして新しい話を考えてみたの。3話描いてみたから送るわ」
そこに描かれていた漫画は、どうやら異世界で勇者パーティーを追放された男が、それでも悪を倒すためにダンジョンに挑み奮闘する内容だった。
ストーリーには詳細に勇者がダンジョンに挑んだ日時と場所が設定されていた。これが現実の【
一番近い日は今から3日後だった。
「上手くいってくれるといいんだけどな」
◇
俺達は漫画に描かれた場所に移動していた。
訪れたのは昨年度、魅力度ランキング最下位となった県だった。
「魅力度ランキングなんて順位付けこそ、
なのに問題にならないのは何故なのだろう?
そんなことを考えながら息を大きく吸い込む。若葉の匂いがどことなく俺の地元を想起させる。
夜中になると街灯が少なく周囲の畑に落ちそうになるところなんかも特にな。
「ちぇっ。なんだよ、現れねぇじゃんか。やっぱり、あのヘルメは効果ないんじゃねぇのか?」
時刻は既に日を跨いでいた。
日中、常に周囲を見回っていたのだが、【
遠くまで足を伸ばしたのに成果が得られなかったからか、ガイが不服そうに頭の上で飛び跳ねていた。
「まだ、1回目なんだから決めつけるのは早いよ! ガイ師匠!!」
「だといいんだけどなぁ」
「どちらにしても、2つ目の場所に行くにはこの県は通らなきゃいけないからさ。ついでだと思おうよ」
「そうだよー! ほら、ガイ師匠! こんなに綺麗な夜景が見れるだけでここに来た価値はあるんだよ!!」
川津 海未の言葉に俺とガイは同時に首を上に傾けた。
澄んだ空気が夜空に浮かぶ星々が映えて瞳に写る。
予知は失敗だったのかも知れないが、まだあと2箇所残っている。
俺は次の場所に移動するために、車に乗り込み後部座席に声を掛ける。
「ここには【
「そう。それは残念ね」
予知が外れたことに感情を崩すことなくフラットに漫画を描き続ける白丞さん。
車内用のテーブルに液晶を置いて手を動かし続けていた。
彼女もまた、リアルを追求するために今回の旅に同行しているのだった。
◇
翌日。
俺たちは更に北にある県へと移動していた。
この場所は白丞さんが自身の漫画で見事に予知をしてみせた震災の中心となった街だった。
今もなお、復興が進んでいないことを示すかのように、倒壊した墓石が散乱する墓地。
ここに【
「そしてそれは正解だったみたいだね」
墓石が連なる中心にある巨大な墓石。
故人の名が刻まれているであろう場所が、黒く渦のようなもので塗りつぶされていた。
「おお! マジであるじゃねぇか! 予知漫画家の名は伊達じゃねぇな!」
車から降りて墓石を眺める俺達4人。
後は【
ーーだが、見事予知を当てた
「この中にはまだ、誰も知らないリアルが――ある!!」
「あ!!」
まさか、【
完全に虚を憑かれた俺は慌てて手を伸ばすが、
掌が
「くそっ!!」
俺もその後を追って【
だが、俺の行くてを阻むようにガイが頭から飛び降りた。
「おっと。どこ行く気だよ、リキ?」
「どこって言うまでもないでしょ! 早くそこをどいてくれ!」
俺の前に腕を組んで立つガイ。
手のひらサイズの人形だからこそ、物理的な足止めにはならないが、それを補って余るほどの迫力がガイにはあった。
「そりゃ無理な注文だな。【
「それは――【
「分かってんじゃねぇかよ」
【
【
今、前にある【
【
「え、そうなの!?」
俺の言葉に川津 海未が驚いた声を出す。
「うん。秘密にしてるみたいだからね」
【探究者】達の死で【
その状況を敢えて不要な情報を開示することで、動きを作りたくないという思惑が国にはあるようだ。
「じゃあ、【探究者】達が全滅したのもそれが――」
力を奪われることで逃げることもままならずに【
それが【ダンジョン防衛隊】の見解ではあったし、俺もその可能性が高いと思っていた。
「恐らくだけどね。でも、だからと言って、今、この場で入らない訳には行かないんだけど」
情報を国が開示していれば――
いや――彼女は分かってもなお、飛び込んだだろう。
それほどまでに彼女は未知のリアルに執着していた。姿の見えない悪意は、時にここまで人を追い込むのか。
「川津 海未さんはここに残って待機して欲しい。俺達が10分待って戻ってこなかったら、その時は【ダンジョン防衛隊】に連絡して欲しいんだ」
「あ、え、うん。分かった!!」
川津 海未はスマホを握りしめて頷いた。
後は――ガイか。
【開発部隊】でも力を貸さなかったように、ガイは自分の気分が乗ったときか、利益がある時にしか力を貸さない。
だったら、その利益を与えてやればいいだけのことだ。
「ガイの言うことも分かる。でも、中にいるのは予知を持った
「それは……!?」
「あのヘルメットだって、新しい【
俺の言葉にガイは針を伸ばしてやる気を見せた。
「おい、なにチンタラ話してやがる! 早くいかねぇと、あの女が【
「わあ! 先輩、凄い変わり身の速さ!! 尊敬だよ!!」
「というわけで、連絡は頼んだよ」
川津 海未に見守られながら俺達は【
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