タゴサクと魔法のドアノブ

 昔むかしのタゴサクのお話。


 行商人からドアノブをもらった。

 魔法のドアノブ。


 壁に付けたら何処でも扉になるという魔法のドアノブ。


 面白がって、付けては開けて、閉じて外す。すると、壁は元のまま、普通の壁に戻ります。


 遊んでいたタゴサクでしたが、このドアノブをお殿様にも見せてあげたくなってきた。

 いつも暇そうなお殿様、きっと喜んでくれるに違いない。


 お城に向かいます。


 お城の入口付近は、お侍さんでいっぱいです。説明するのも面倒。


 裏手に回って、白壁にドアノブを取り付けます。

 現れた扉をソッと開いて中に入ります。

 中は、台所。たくさんの女中さんが料理を作っておりました。


 これは、見つかってしまうと、慌てて扉から出ようとしたタゴサク。

 慌てすぎて、通り過ぎる途中でドアノブを外してしまった。

 瞬間で扉から壁に戻る。


 気付いた時には、哀れタゴサク、お尻から下が城の中、胸から上が城の外、お腹は壁の中にはさまってしまった。


 お城の中では大騒ぎ。

 気がつけば、壁からお尻が生えている。

 ツンツン突くと、ビクンと揺れる。

 パシンと叩くと、ビクッと震える。

 代わる代わる女中の皆で、叩き出した。


 焦ったタゴサク、はずみでドアノブを落としてしまった。

 壁から生えた状態では、落ちたドアノブに手が届きません。

 そのうち、お尻に感触が。

 ツンツン──ビクン。

 パシン ──ビクッ。

 パシン パシン パシパシパシ。

 痛い痛い痛い!


 だんだんと、城の外でもお侍さんが集まりだした。


「お侍さん、お侍さん、お願いです。そこに落ちているドアノブを壁につけてもらえませんか?」


 お尻の痛みに耐えながら、お願いしてくるタゴサクに、哀れを感じたお侍さんの一人がドアノブ拾って、壁につけてくれた。

 でも、事情の分からないお侍さん、ドアノブを付ける場所をちょっと間違えた。


 タゴサクの横に扉ができてしまった。

 タゴサクは、出られない。


 不思議そうに新しく出来た扉を見ている、お侍さん。

 台所でも、急に扉が現れたから、大騒動。


 その時、別のお侍さんが、不思議に思って、ドアノブを取ってしまったから、さぁ大変。


 壁にお侍さんがはまってしまった。

 タゴサクの横に並んで、お尻は台所、頭は外に。

 二つ並んだお尻。

 二つ並んだ頭。


 その後も、なんやかんやありまして、外に集まったお侍さんたちも、台所にいた女中さんたちも、それから見に来たいろんな人が、壁に挟まってしまいました。


 城の中、ズラリと並んだお尻たち。

 城の外、ズラリと並んだ頭たち。


 みんな仲良く並んでしまいましたとさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る