タゴサクとのっぺらぼう

 昔むかしのタゴサクのお話。


 お城のお堀の所に、夜になるとお化けが出るという噂があった。


 タゴサク、これは一回確かめに行こうということになった。


 夜食にと、大きな大きな、顔ほどもある塩おにぎりを作って、お掘りに行った。


 夜のお堀は真っ暗で、そうでなくてもお化けが出そうな雰囲気。


 タゴサク、ボ〜とお化けを待ったが、何も出る様子がない。


「握り飯でも食うか」


 大きな塩おにぎりを取り出し、パクッ。


 その時、不意に後ろから声が聞こえた。


「もしもし」


 顔に目も鼻も口もないのっぺらぼうであった。


 その声に振り向いた、タゴサク。


「ギャ〜〜! のっぺらぼう!」


 大声を出したのは、のっぺらぼう。

 顔ほどの塩おにぎりを食べてたタゴサクの顔が、のっぺらぼうに見えたのだ。


 大声の後、気を取り直したのっぺらぼう。

 よくよく見ると、それは顔ではなく、大きな大きな塩おにぎり。


 さあさあタゴサクも、急に声をかけられてビックリ。

 ビックリした拍子に、おにぎりの中の梅干しが二つ、口の中に。


 息せいて、吹き出す種が二つ。ピュウとばかしに飛び出して、のっぺらぼうのお顔にプスリと、刺さってしもうた。


 あわてる、のっぺらぼう。


 あせる、タゴサク。


 タゴサク、落ちついて、声をかけてきた人を見ると、紅い目をした細身の女性。


「お化け〜」


 叫んで、走って逃げ出した。


 後に残った、のっぺらぼう。

 顔に刺さった梅干しの種が取れずに顔を押さえて座り込む。



 次の日、周りに聞かれたタゴサク。

 のっぺらぼうを見たかときかれたが、あそこにいたのは、紅い目をした女性だけ。


 つぶらな瞳の女性を思い出し、色白の美人さんだったなぁと、つぶやいた。


 

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