最も死に近い悪女になりました

江田真芽

プロローグ



 ーー10年前のあの日、

誕生日パーティーのあとに庭園に出た私は、座り込んでしくしくと涙を流す女の子を見つけた。


 愛犬のルークと共に駆け出した私を、護衛は少し離れたところから見守っていて、この女の子の存在には私とルーク以外気付いていなかった。


 涙を流す女の子に対して、ルークは牙を剥いてグルルルと喉を鳴らした。当時10歳だった私も、城の庭園に見知らぬ女の子がいることに、もちろん違和感を覚えた。


 この時の違和感を大切にすればよかった。



「あなた‥どうしたの?大丈夫?」


 私が女の子に声を掛けると、女の子はゆっくりと顔を上げた。目と目が合う。その瞬間に、女の子は姿を消した。


 私の体がこの女の子に奪われたのだと気付いたのは、すぐそのあとのこと。



 ーーこの日のことを、私は一生悔やみ続けるだろう。


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