第49話 あの子とこの娘とそして君もなの? ACT 15
ど、どう説明―――――弁解? いい訳、するんだ!
「誰? あんた」
満里奈は、ぎろりと杉村を睨みつけて言った。
「誰って、私は笹崎君と同じクラスの」
「あ、あなたね。先輩の事狙っているもう一匹の野良猫って」
「野良猫って何?」
ぴくんとからだをふるわせて、言う杉村の表情はちょっと怖い。この子にこんな一面があるとは。
「野良猫は野良猫。人の獲物を横取りにしに来たんでしょ」
「獲物って、笹崎君は獲物なの? 多分間違いはないと思うけどあなた1年の
「何よ、あなたこそ先輩の何なのよ。あっそっか、単なるクラスメイトが偶然ここで私達の事目にしちゃったていうことか。じゃぁ野良猫は取り消さないとね。ただの通りすがりの人なんだもん。何もこれ以上は言えないわよね――――――だって私達恋人同士なんだもん。キスもさっきしたんですよ」
どや顔で言う満里奈。キス確かにしたけど、それってさ。そっちから一方的にしてきたんじゃないのか。
「キ、キス……本当に! したの笹崎君?」
「ええええっと、そ、それはその」
冷たい杉村の視線が胸を打ち抜く。
「キスくらい私だって――――――した」ん、最後の方の声は小さかったけど。
「えっ、何ですか? キスしたんですか? なんで単なるクラスメイトのあなたがキスするんですか? あ、そうか、あいさつ代わりのほっぺにチュッていうやつですね」
「ち、違うわよ。ちゃんと唇と唇の――――――キスなんだから」
「ほほぉ―、そうですかでもキスだけなんですよねぇ――、私なんか今日先輩の手作り弁当までもらっているんですよ。しかも愛のこもった手作りおべんとうなんですからね」
「ふーん、その手造りお弁当ってこの地面にひっくり返っているのがそうなのかしら?」
えっ! 何、弁当が……杉村の指さす方に目を向けると、無残に地面にひっくり返って落ちている弁当が目に入った。
お―――――――――い!! 弁当が!! あああああ、今日も昼抜きかぁ――――!!
「あれ、それってもしかして先輩のお弁当……なの?」
「ああ、そうだよ、ああ、これで今日も昼向き決定だよ」
「もしかして、さっきので?」
だとしてももう、どうしようもないくらいの無残な姿になっている弁当だ。
「あのぉ――乃木さん、本当にあなた笹崎君と付き合っているの?」
「え、付き合っているていうかその、わ、私は恵美先輩と笹崎先輩の事。ていうか……ていうか、その。う、くくくくくっ。かの勇者よ、前世の契りを交わした私達は、この世界ではまだ他人のようだな。しかしだ、この因果はたとえ時と時空を超えようとも断ち切れぬものなのだ」
満里奈は立ち上がり、杉村を指さし
「われの名はマリナなり。われは勇者様とは一対なり。もうこの関係は切っても切れない仲なのだ。たとえこの世界でどんなに恋焦がれようとも、我を超えることは出来ぬのだ。あはははははははは!!!」
ああ、此奴自分の世界にどっぷりと入ってしまっている。
さすがに杉村もこの状態の彼女にはもう何も言葉を発すること……いやいや、もうあっけに取られてしまってどうしようもないという感じだ。
「それでは、我がいとしき勇者よ。私はもうこの世界に留まることが出来ない。本来の世界に戻らなければいけない時が来たようだ。だからさらばだ……また来るべく時に! さらばだ――――魔王!」
魔王? 勇者から今度は魔王か? 支離滅裂。
ふと見ればすでに満里奈の姿消えていた。
そして、今ここに残っている杉村のこの空しそうな視線と、表情が僕をじっと見つめていた。
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