第18話 中古の布団
大学で一人暮らしをしていた時のこと。
三年間使用していた布団をうっかり汚してしまった。
あまりの汚れ具合にいっそのこと買い替えを考えていた時、布団のリサイクルショップを見つけた。
タイミングの良さと目新しさに私は店に入る。
中に置かれた布団はどれも新品のようにきれいでふかふかとしていた。
しかも値段は千円だったり、ホームセンターなどで何万円もするような高そうな布団までもが五千円以下という破格だ。
中古という不安もあったのだが、購入して一週間以内であれば手数料で千円を支払う必要があるが返品が可能だという。
物は試しと私は掛布団と敷布団のセットを二千円で買った。
初日、購入した布団は中古だというのにとてもふっくらとしていて、三年間使い続けて平たくなった前までの布団とのあまりの寝心地の違いに、私はあっという間に眠りについた。しかし、やはり身体に馴染んでいないせいだろう、夜中に一度目を覚ます。
二日目、夜中に何度か目を覚ます。寝心地が悪いわけではない。ただ、ふと誰かが隣に寝ているような妙な落ち着かなさを感じてしまう。
三日目、休日。なんとなく
私はその日のうちに件のショップへ布団を返品した。
店員は「ああ、そうですか」と不審がるでも理由を聞くでもなく受け取り、手数料を引いた差額を私に支払う。
私は気になって「返品って結構あるんですか?」と聞いてしまった。
店員は「そうですね」と軽く答える。
「中古品ですからね、安いから買ったはいいけれどやっぱり気持ち悪いとか、感触が身体にあわないとか、そんな理由で返されるお客さんはたまにいますよ」
とはいえ、購入してそのまま使い続ける人の方が圧倒的に多いらしい。それどころか常連もいるのだとか。
その話にこの三日間のことは自分の気のせいだったのだろうかと思い始めていると、
「まあ、うちの布団を特にご利用になるのは独り暮らしで寂しいっていうお客さんがほとんどなんですけどね」
そう言って店員は笑った。
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