真相
図書館を出た僕とロバートはそのまま宿へ戻った。彼の推理によるとジョージ・ウォルトンがこの町にやって来るのは明日だという事でそれまでは各々自由に行動することになった。そうなったらロバートは直ぐに酒場へと繰り出した。酒をあおっているか、ギャンブルをしに行ったのか、はたまたその両方か。
僕は酒が飲めないという事が思いっきり証明されたので(そもそも未成年だが)特にすることもなく宿で休むことしかすることが無かった。
とりあえずベッドに転がり込んで寝そべりながら手記にここ最近あった出来事を書き記していく。
だがなかなか思ったように筆が進まない。理由はアイデアが出てこないとかそうではなく図書館でのロバートの考えだった。もしあの考えが正しいとしたらなんてことがずっと頭をぐるぐると巡ってなかなか集中できないのだ。
どれだけ時間がたっただろうか、日はすっかりと落ち誰もがベッドに入るであろう時間にロバートは帰ってきた。いつもの張り付いた無表情で彼はベッドに座りこんだ。
「遅かったね。ポーカーでもやってたのかい?」
そう聞くとロバートはもちろんと答えた。そして彼が持っていたバッグに入っている溢れんばかりの札束を見せた。
「これだけあればしばらくは困らないだろうな。さて、明日の準備だ」
そういうと彼はしまい込んでいた荷物を何やらあさりだし、その中から何か細長いものが包まれている布を取り出した。
「こいつを使うのは久方ぶりだな。明日はこいつに頑張ってもらおう」
そういうと彼は布を剥いだ。その中身は、銃身が水平に二本ついた散弾銃だった。
「俺の考え通りにジョージ・ウォルトンが明日姿を見せて妙な真似をするようならコイツで一撃喰らわせてやる」
この言葉がそこいらのチンピラの放つ強がりじゃないことは良くわかっていた。
そして、そんな言葉を表情一つ変えることなくつぶやく彼に何とも言えない恐怖を感じた。
その日はそのままお互い寝ることにした。そして翌日、僕たちの行動は夜に起こすことになっていたから、特にやることもなくそれぞれ町をぶらつくなり図書館で書物をあさるなりで時間をつぶすことにした。
ロバートはどうか知らないが、僕は昨日以上に物事に集中できないでいた。
もしロバートの考えが正しいなら今日の夜にジョージウォルトンと相まみえることになる。酒場のバーテンのいう事が正しいなら相当な銃の腕前らしいので、僕は撃たれないかどうかの恐怖心でいっぱいだ。
それでも逃げ出そうとしなのは恐怖以上にこの出来事が小説のネタになるんじゃないかという欲望のためだった。ロバートと出会った最初の酒場の出来事以外で書くことがあまり多くなかったからここで何かを掴まないといけないという焦りもあっただろう。その二つの感情が今僕を動かしている原動力になっている。そうでもなければとっくに逃げ出しているだろう。
焦りからか時間がものすごくゆっくりと流れていく。重い気分のままただ時が来るのを待つという事は思っていた以上に苦痛で結局僕は時間が来るまで何も出来ずただベッドに座っているだけだった。
ずっとそんな気分で何も考えがまとまらず恐怖心が消えないが時間は僕が勇気を持つのを待ってはくれない。気が付いたら高い位置にあった太陽は今や沈む寸前の夕陽となっている。もうこんなに時間がたったのかなんてことをぼぅっと考えていたら、ロバートが戻ってきた。
「さてそろそろ時間だ行くぞ」
意気揚々に話すロバートに対して僕はいまだに恐怖を振り払えないでいた。
「どうした?怖いのか?」
それを察したロバートは僕に声を掛けてきた。その声は心配しているといった様子はなく何となくだが僕を試しているように感じた。
「怖いよ、ウォルトンがどんな銃の腕をしてるか分からないけどそれ次第で僕たちは殺されるかもしれないからね。でも行くよ、行かないとネタは手に入らないから」
彼の挑発するような発言も気になるが、何より僕はネタが欲しい。遅くはなったが、覚悟は決まった。
そうかと言うとロバートは散弾銃を手に取りすぐに外に出た。
ふと窓の外を見ると夕陽が沈みかけている。あの夕陽が落ちた後に忍び寄る夜の闇に僕の心は耐えられるのだろうか。僕はそんなことを考えながらロバートの後を追って宿を出た。
宿を出て少し経った後にすぐさま日が落ち街の明かりにわずかに照らされているだけでその明かりが届かないところは暗闇が広がりだした。
その闇の中をロバートは黙々と歩いて行く。彼の後ろを黙ってついて行っているが後ろにいる僕ですらもしかしたらギャングが闇から飛び出してくるんじゃないかという恐怖心があるのに先頭をどんどん歩んでゆく彼はもしかしたら恐怖という感情をどこかに落としてきたか、それとも雑貨屋で売りさばいてしまったのではないか、
もし売りさばいたとしたら僕の恐怖心もぜひとも売り飛ばしたいものだ。
しばらく歩き図書館近くの銃砲店にたどり着き僕たちはその裏に潜んだ。
「本当にここにウォルトンが来るのかい?」
ロバートに聞いた。彼は自信に満ちた表情でこう言った。
「ああ、俺の考えが正しければ絶対にここに来るさ。お前からポーカーで巻き上げた金を賭けたっていい」
彼と出会った時のポーカーで負けた話を持ちだされ少し苛ついたがこの苛つきでさえ恐怖を少しでも薄くしてくれてほんの少しマシな気分になった。
それから一体どれだけの時間がたっただろうか。町中の店の明かりは徐々に落とされていき遠くに見える酒場の明かりだけが煌々と輝いている。
町はずれにあるという事で銃砲店の周りはもう真っ暗だ。その闇の中で僕とロバートはじっと待っている。これじゃどっちが怪しい者だか分かったもんじゃない。
そう思った矢先、何か物音が聞こえてきた。誰かが歩いてくるような音だ。それも二方向からそれぞれ一人ずつのようだ。固唾と飲んで待つ僕に対して相変わらずロバートは余裕綽綽の様子だった。そして二人の足音が止まった。暗くてよく見えないがどうやら何かを話しているようだ。一体何の話をしてる?と僕が聞き耳を立てようとした時だった、ロバートが猛禽のような狙った獲物を見る目をして散弾銃を手に立ち上がり二人の人影に向かって銃口を向け鋭く言い放った。
「動くな!動いたら体のどっかが穴だらけになるぜ」
暗がりでもわかるほど二人の人影はビクリとし、そしてゆっくりとこちらを向いた。
一人の男は全く知らない男だったがウォルトンギャングの連中と同じくポンチョを身に着けている様子からこの男もおそらくギャングだという事が分かる。
だが問題はもう一人の男だった。暗がりながら目が慣れてきて今や彼の顔をはっきりと認識できるようになった。その男はこの町の希望、保安官のカークだった。
「ほら見ろポール、俺の読み通りカークがいるだろう?」
そうだ、カークがいるのは読み通りだった。僕は図書館での彼の推理を思い出していた。
「この新聞から真相がわかる?本気で言ってるのかいロバート?僕にはさっぱりわからないけど」
僕からはさっぱり分からなかった。一体この新聞からの情報のどこにヒントがあるのか。ロバートはゆっくりと周りに聞かれないよう小さな声で語り始めた。
「結論から先に話そうか。まずカークとジョージ・ウォルトン、おそらくこの二人はグルだ」
彼の口から出た推理に僕は危うく大声で聞き返しそうになった。
「なに?!なんで町の保安官とギャングのリーダーがグルなんだよ?」
「まず普通に考えておかしいと思わないか?1年もこの町にいてジョージ・ウォルトンの居場所も分からないなんて。それに記事を見たところジョージ・ウォルトンは何度かこの町に来ているようだ。普通はギャングのボスがいたら保安官なら捕まえに来るだろう?」
確かにそれについてはそう思った。だがそれがなぜグルという事になるのだろうか。
そんな疑問がよぎったと同時にまたロバートが語り始めた。
「そして次にだ、一応は保安官らしく手下のギャングを捕まえているようだがこれはパフォーマンスだ、多分だがウォルトンとあらかじめ口裏を合わせたやつを捕まえているはずだ」
また予想外の事を言い出した彼に対して僕は何のためにそんなことをと聞き返そうとしたが彼がさらに続ける様子だったため一旦はその言葉を飲み込んだ。
「一応は保安官活動をしていることをアピールしなきゃ怪しまれると思ったというのが一つ、そしてもう一つが金稼ぎだ。新聞にも載ってるがどうやら捕まえたギャングに対して賞金が出てたらしい。その出所が半分は警察から半分は町からだったようだな。要は自作自演でギャングを捕まえて町から出る賞金をピンハネしてたって事さ」
驚きはしたものの確かに今のところは筋が通ってる。だがまだ他にも疑問は残っている。
「・・・とりあえず彼らがグルの可能性があるのはわかったさ。でもなんで明日ジョージ・ウォルトンが現れるって分かるんだい?」
そこまで言ってハッとした。その表情を見て彼は薄く笑いながら僕が気が付いたことを語り始めた。
「気が付いたようだな。そうだ、カークはお前さんに絡んだギャングを捕まえた。
その賞金を受け取りに落ち合うはずだからな」
なるほど、確かにそうだ。だかここでもまだ疑問が残る。
「でもなんで日程まで予想ができる?明日の夜と君は言ったけどそうじゃない可能性も大いにあるだろ?」
そうだ、金の受け渡しだとしても別に日程なんていつでもいいはずなんだ。それについてもロバートは推理を語りだした。
「確かにそうだな、だが奴らには傾向があるんだ。新聞に書いてあるジョージ・ウォルトンがこの町にやってきた日、これはヤツの手下が捕まった日の決まって翌日だ。そしてこの記事だ」
彼が取り出した記事には深夜に見知らぬ男が二人いたという記事だった。
「この見知らぬ二人の男の記事、これも定期的に書かれている。そして書かれているタイミングはギャングが捕まった翌日だ。それもどの記事も毎月必ず同じ日に起きてる。そしてこの場所は必ず図書館近くの銃砲店の裏だ」
そう聞いた僕は早速記事を読み漁った。すると彼の言う通りギャングが捕まるタイミングは多少の誤差がある記事もあるがおおむね24日、そして見知らぬ男が見つかる記事は決まって25日に記載されているのだった。
「そしてバーテンが言ってた一人捕まえてもまた一人ギャングが増えて鼬ごっこだって話は、つまり捕まった替えを増やしたという事だろう。こうして奴らはカークがこの町に赴任してからの1年間ずっと小汚い金を稼いでいたのさ」
だんだんと彼の推理が現実味を帯びてきた。僕は一応程度だが確認したいことがあったので聞いてみた。
「彼は、彼らは何時から手を組んでいたんだと思う?」
「最初からだろうな、この町にカークが来た時からだ。これに関しては想像になっちまうがな」
ここで初めて想像だという言葉が出たがなぜそう思ったかも彼は直後に語った。
「その根拠がこの記事だ」
そう言って僕の方に差し出してきたのはこの町の出来事ではない違う町の保安官襲撃事件の記事だった。
「この記事に書かれてる襲撃にあって撃たれた保安官の名前だがカーク・アドラーという男だそうだ。そしてこの事件が起こったのが1年と少し前だ。この襲撃をウォルトンギャングの仕業かどうかは分からんがタイミング的にはこの町に奴らがやってきたタイミングと合致するわけだ」
確かに偶然の域は出ないが襲撃したからか、それともこの新聞記事を読んだからかどちらにせよ名前をそこから得たというのもありえなくない話だ。
「そしてこの保安官の名前をいただいてこの町の保安官、カークという幻想を作り出し金を稼ぐことを思いついたんだろう。だから最初からこの二人は繋がっていたんだろうさ」
ここまで来たら僕は完全に彼の考えを信じ切っていた。最後に補足程度に彼は付け加えた。
「で、恐らくだがジョージ・ウォルトンはギャングの連中には真相を話してはいないか信頼のおけるやつらにしか話はしていないはずだ。もし話していたらあいつらの中で誰が捕まるかの生贄をめぐって殺し合いが起こるだろうからな。
そして同様にカークには手を出さないよう適当な理由を付けて命令をしていたんだろうな」
そこまでが彼の推理の内容だった。そしてこの推理が語られた翌日の夜、つまり今彼の予想通りの場所、日にちに二人の男が現れてその中の一人がカーク、いやカークの名前を語ってるだけであろう男とそしてもう一人が、きっとジョージ・ウォルトン本人なのだろう。
散弾銃を向けられた二人の男はじっとこっちをにらみつけている。
だが次の瞬間ジョージ・ウォルトンが隣の男に向かって罵倒を吐き出した。
「おいグラント!テメェさては俺を売りやがったな?いくらで売ったんだこのクソッタレ!」
なるほど、カークと思っていた男はグラントというのか。これで彼が偽物であることも証明された。
「ば、馬鹿なこと言うなジョージ!俺がお前を売るわけないだろ?大切なビジネスパートナーじゃないか!」
グラントは引き越し気味に訴えた。この前ギャングを捕まえに来た時の凄みはどこへやら、今や叱られている犬のようだ。
「お前たち稼ぎ方は賢かったがそれ以外が馬鹿すぎたな。もう少し考えてから商売した方がいいぜ」
「まぁ、お前らが何者でどんな汚いやり方で金を稼いでいたかはどうでもいいんだ。
だが、こっちには用事がある。ジョージお前を捕まえるか、それか消さなきゃならないんだ」
ロバートが今回の目的を話した。それを聞いた二人ははみるみるうちに顔が引きつっていった。
方や金儲けの手段が失われることについて、そして方や法の裁きを受けるかこの場で殺されるかの二択を迫られていることにだ。
それぞれの目的、恐怖、疑念が交差した乾いた空気になり皆がお互いの顔を見ていた。だがその沈黙は破られることとなった。
動いたのはジョージだった。このまま捕まれば法の裁きを受けるだろう、彼はその選択を蹴って今までその腕前で生き残ってきただろう自分の銃の腕に賭けることにしたのだ。
だが、それはあまりにも分が悪すぎる勝負だった。
銃に手を掛けたジョージを見た瞬間すかさずロバートは散弾銃の引き金を引いた。
今まで彼の拳銃から聞こえてきた銃声とは比べ物にならない大きな破裂音が響き、それと同時にジョージは後ろにのけぞりそのまま大の字に地面に倒れた。
倒れた彼の胸からはおびただしい量の血が噴き出し流れている。
先程まで激昂と苦悩が入り混じった燃えるような彼の瞳はすでに光が失われ、彼の口からは最後に少し空気が漏れる音がした後はピクリとも動かなくなった。
「ジョージ!」今や魂の抜け落ちた肉の塊にグラントは駆け寄り揺さぶった。だがそうしたところ何も起こりはしない、改めて現実を受け入れたグラントは何も言わずうなだれている。彼とジョージの間に何があったかは分からないが少なくとも仲間を失った悲しみに打ちひしがれているように見えた。
彼はビジネスパートナーと嘯いてはいたもののそれなりには仲間意識があったのだろうか。
ロバートは崩れ落ちたグラントの元に歩いて行き彼に声を掛けた。
「さて、俺の目的は達成されたわけだ。だがお前さんの処分については何も決まってない。さてどうするかな?」
グラントは力無い声でロバートに聞いた。
「お…俺も殺すのか?それとも保安官に突き出すのか…?」
ロバートは少しせき込みその後、黒い笑みを浮かべてグラントに告げた。
「それをどうするかは、お前さん次第だ」
翌日の朝、ロバートと僕は酒場にいた。ロバートはこの前のようにバーテンとポーカーで遊んでいて、僕はその隣の椅子で様子を見ていた。
「つまり、カークとジョージ・ウォルトンはグルで金を稼いでた。それが真相って事か?」
ロバートは昨日の夜に判明した事実、そしてジョージ・ウォルトンがもうこの世にいないことをバーテンに伝えた。
「その通りだ。これが真相だったのさ」
そこまで言うと彼は手に持っていたカードを開いた。もう何度目か分からないロバートの勝ちで、これまたもう何度目か分からないバーテンの苦しい表情が浮かんだ。
「それで?カーク、いやグラントはどこにいるんだ?」
負けた分の金を払いつつバーテンは尋ねた。
「今アイツは、グラントは署にいるよ」ロバートはそう答えた。
「つまり、署に突き出したのか?」バーテンはさらに聞き返した。誰でもこの内容で話を聞いたらそう思うだろう。だが実際はそうじゃない。
「いや、あいつは今日も保安官として頑張っているよ」
ロバートの答えにバーテンは面食らった表情をしていた。
昨日の夜にロバートがグラントに与えた選択肢は二つだった。一つはこのまま署に突き出されること。そしてもう一つは今度こそ正しく保安官として働くことだった。
グラントに確認をしてみたらやはりギャング内で彼とジョージが繋がっていることを知っている人物は居ないという事だった。それならばとロバートはこの条件を付きだしたのだ。そしてこの真相は依頼主のバーテンには伝えることも付け加えた。そして自身の犯した罪を紙に書きだす形で白状させ、その紙を同じくバーテンに受け渡すことも。
「これでアイツは逃げられなくなった。もし逃げたり妙な真似をするようならこの紙に書かれている内容を町の人々に知らせるといい。まぁ、あいつがもう妙な真似を起こすようには思えないけどな」
そう言うとロバートはバーテンにグラントが書いたその紙を受け渡した。
それを見たバーテンは満足そうな顔をして一旦席を立ちあがりカウンターの引き出しにその紙をしまい込んだ。
「それで?この事件は世間的にはどんな風に幕を下ろしたんだ?」バーテンがカードを配りつつ聞いた。
「それは新聞でも見ればわかるさ。さて、仕事は済んだぞ。あの男がどこに向かうと言っていたか教えてもらおうか」
この答えを聞くために僕とロバートは彼の依頼を受けたのだ。バーテンは賭けるドルをターブルに起きつつ答えた。
「あの男は酔いながらエル・パソに向かうと答えていたよ。一体何の目的かは知らんがね」
ロバートの目が輝いた。そのヒントを求めて働いていたのだ、いつもの仮面のような無表情が少し緩むのも無理はない。
「そうか、助かったよ。俺は行くとしよう」
そう言うとロバートは席を立ちあがったがバーテンはそれを引き留めた。
「おいおい待てよ、まだポーカーの途中だろ?」
「もう勝負はついてるさ、最後の勝負の金はオマケにしておいてやるさ」
そう言うとロバートは席を立ち早々に店を後にした。僕も置いて行かれないようにそれにすぐついて行った。
宿に止めてある馬に乗るため歩き始めた途中の道の傍らで新聞販売の男がいたため一部買うことにした。
そこには昨日の事件の事がこう書かれていた。
25日の夜、ウォルトンギャングのリーダーであるジョージ・ウォルトンが町の保安官であるカーク・アドラーの手により射殺された。調べによるとカークは銃砲店で盗みを働こうとしたジョージ・ウォルトンを発見、逮捕しようとしたがジョージ・ウォルトンが抵抗し拳銃を抜こうとしたために防衛のため手にしたショットガンで射殺したとのことだった。リーダーを失ったことでギャング団は今後衰退していくだろうと考えられている。
新聞にはそう綴られていた。この町の人々は敏腕保安官がついにギャングのリーダーを成敗したものだと思っているだろう。だが現実はそうではない。そしてその真相を知るのは僕にロバート、バーテン、そしてカークとして生きていくことを決めたグラントの4人だった。
町中の人々が知らない秘密を知っている。そう考えたらなんだか愉快な気分になった。
そして僕とロバートは馬にまたがり旅をつづけた。新たな目的地、エル・パソに向かって歩を進めた。
「あいつ、いったい何を言ってたんだか」バーテンはそんなことを呟いて自分に配れたカードを見た。そこにはQの3カードが握られていた。
そして今や空っぽになった席に配られた、つまりロバートに配られたカードを開いた。そこには♣の1~5のストレートフラッシュが並んでる。
ギャングが減りこの町に人が戻ってきたら彼の店はさらに繁盛するだろう。
そして何より、このポーカーでこれ以上金を失わずに済んだわけだ。
この事件で一番得をしたのは間違いなく俺なのだろう。
そんなことを考えながら彼は少しだけ笑ったあとカードをしまい、店を開ける準備を始めた。
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