第23話
「──今日から白雪がクラスメイトになる。仲良くしろよ」
そんな端的な紹介で丹羽先生は私に目を向ける。憧れの丹羽先生の授業だけ、真ん中の最前列で受けさせてほしいと灰音ちゃんに言ったら却下された。
大きな声で返事をするクラスメイトたちは素直でとてもいい子だ。まだ大勢の目は恥ずかしくて顔を上げられなかったけれど。
先生は超絶人見知りの私のために、教卓の前で自己紹介をさせるなんてことはしなかった。そういうところが好き。
「それじゃ、今日は異能の実戦訓練を行う。体操着に着替えて訓練場へ出ろ」
必要最低限のことだけを告げて、先生は猫背のまま教室を出て行った。
灰音ちゃんに体操着が入った袋を渡される。
「なんで灰音ちゃんが持ってるの?」
「テメェが忘れてたからだろーが」
「そうなのか。ありがとう!」
「おー」
体操着を抱えて灰音ちゃんの後ろをトコトコとついていけば、すぐにスピードを落として横に並んでくれた。
「着替えは灰音ちゃんと別なの?」
「はァ!?逆になんで一緒なんだよ」
「私が灰音ちゃんと離れたくないからですけど?」
「テメェ!!可愛いからって調子に乗んな!!」
鼻を摘まれて上に引っ張られるのを手足をバタつかせて抵抗する。そんな私を見てすぐに手を離すと、そのままするりと手を繋いでくれる灰音ちゃんはスパダリすぎた。
「だいすきよ〜灰音ちゃん〜」
「ハイハイ」
廊下を歩く私たち(特に灰音ちゃん)を見て、他クラスの生徒がおぞましいものを見たかのような表情をしていた。
いつまで続くのだろうこのデジャブは。
訓練場は想像していたよりも広大で目を丸くした。
更衣室はもちろん灰音ちゃんと離れ離れになり、クラスの女子生徒からの質問攻めにあいながらそそくさと着替えた。そして更衣室の外で待っていてくれた彼について訓練場へ向かう。お願いしたわけではないのに、私の気持ちを汲み取ってくれた灰音ちゃんはやはり人一倍優しい。
訓練場は校舎から少し離れたところにあり、異能を使っても壊れにくいような設計になっていたり、設備が充実していたりと軍事施設も顔負けだ。──と分かったような気でいるが、私には原作の知識しかなく、実際に見ると圧倒されてしまった。
「私も訓練をするの?みんなと一緒に?意味わかんない運動能力の持ち主たちと?私はここで死ぬかもしれない」
ブツブツとネガティブな発言を繰り返す。そんな私を安心させるように灰音ちゃんは言った。
「俺がそばにいるうちは死なせねェよ。守ってやるから心配すんな」
ぽん、と頭の上に手を乗せて私を安心させてくれる。灰音ちゃんは優秀な生徒だ。学力も実技も申し分なく、ただ一つの欠点は横暴すぎる態度だった。
「じゃあ灰音ちゃんのそばを離れないことにする!」
「おー、そーしとけ」
実際はただのイケメン優男なのは私だけが知っている。
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