第6話 お風呂掃除

 数日後、コレットとリーナは罰として、毎日のお風呂掃除を命じられた。

 「クリエイト、ウォーターラン」

 リーナが魔法を使わずブラシでごしごしと地味に掃除しているのに対して、コレットは浴槽よくそうの水をあふれ出させてゆかにまいた石鹸せっけんを洗い流していた。


 リーナが口をとがらす。

 「そんな大雑把じゃ洗ったことにならない」

 コレットは浴槽のふちに腰かけ、足を組みながら、

 「いいのよ、適当で」

 「無断外出したこと反省してないでしょ」

 「リーナだって無断外出したじゃない」

 「それは、コレットが行っちゃうから」


 コレットがにやりとしてからかうように言う。

 「そんなに私のことが好きなわけ?」

 リーナはブラシで床を激しくゴシゴシこすりながら、顔を真っ赤にして、

 「そ、そんなことないけど」

 「じゃあ、一体なんなのよー」

 「コレット一人じゃ危なっかしくて不安だし、一人で行かせるわけにはいかないと思って。ええと、私がついていないとダメだと思ったの」

 「ふーん?」


 コレットは立ち上がってびをする。

 「今度はもっと遠くへ冒険に行きたいね。リーナ」

 リーナは顔をせていて、表情はうかがい知れないが、ぽつりとつぶやく。

 「結局、私たちまだ子どもだしさ、学校にいるのが良いと思う。先生に守られていないと……」


 そして、こちらにり向いたリーナが目に涙を浮かべながら言う。

 「私怖かったんだ。コレットがいなくなっちゃうんじゃないかって、もう会えないんじゃないかと思って。だから追いかけた。そして男に捕まった時またその考えが頭に浮かんで、怖くて何も出来なかった。でもあそこで咄嗟とっさの判断が出来たコレットはすごいと思う」


 「な、なに突然? リーナが私をめるなんて珍しい」

 それからしばらくリーナは泣いていた。

 コレットはどうしたら良いかわからなかった。

 やがて、掃除当番の罰も終わり、日常が戻って来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る