第255話 運転
俺は桃代の車を運転した事がない。
今日が初めてだ。
俺が運転した事がある車は、自動車学校の教習車と、
傷を付けないようにしないと、もしもぶつけたり、こすったりすると、桃代からどんな要求をされるか分からない。
あとはキーコが車酔いをしないよう、安全第一で運転をしないとな。
目的地をナビに打ち込み、あとは指示通りに進めばいい。
ナビを使うのは初めてなので、画面に気を取られ、前方不注意にならないようにしないと、桃代たちを助ける前に、俺が助けを呼ぶようになる。
田舎の道は駅前でもない限り、狭いというか細い。
それなのに、結構なスピードで走るヤツがたくさん居る。
人の多い大都会で、その運転をすると、すぐに人身事故になると思う。
そういう事で、俺は安全運転で車を
キーコは俺の安全運転にホッとしている。
なにせ、初めてここに来て、連れて行かれた買い物の帰り道で、桃代が梅さんの車と張り合い、レースもどきの運転をした為に、死にそうな顔で車から降りてきたからな、今日は安心して助手席にいる。
「ねぇ、モンちゃん、行方不明ってどういう事なの? 誰が行方不明なのか分からないけど、桃代姉さんが一緒に居て、あり得るのかな?」
「そうだな、桃代は変なヤツだけど気配りは出来る。そうなると、桃代を迎えに来た、会社の奴らが勝手な行動をしたんだろう」
「あたしは少しだけ見たけど、男の人が二人で迎えに来てたよ。もしも、あの人達が行方不明なら、桃代姉さんはもっと不機嫌になってないかな?」
「んっ、そう言われるとそうだな。じゃあ、ユリか苺のどちらかだな? いや違う、ユリの携帯に連絡がついたからユリではない。そうなると苺って事になるな。キーコ、苺とは連絡がついたのか?」
「ううん、最初に連絡したユリさんのスマホに繋がったから、苺さんには連絡をしてないの。だけど苺さんだったら、それもおかしいでしょう。あの人には特殊な能力があるんだから」
「それもそうだ。龍神が備えているヘビの特殊能力を、苺も備えている筈だからな。じゃあ、誰が行方不明なんだ?」
「わからない。ただ、何があっても対応が出来るようにしておかないと」
「いいかキーコ、変に気負うなよ。見た事もない会社の奴らはどうでもいいが、ユリか苺なら必ず俺が見つけてやる」
「えへへ、不謹慎だけど、紋次郎兄ちゃんが探してくれるなら、あたしも行方不明になってみようかな」
「バカ、見つかった後を想像してみろ。
「ひゃっ、怖い。あたしは怒られた事がないけど、時々怒られてる桜子さん達は、本気で怖がってるから、怒られたくない」
「そうだろう、俺だってそうだ。アイツを怒らせて、寝ずの説教を何度された事か、思い出すと腹立つぜ」
「え~っと、それは仕方がないと思うよ。桜子さんに聞いたけど、あたしの両親を殺した狂った侍と同じ、穢れの結晶を吸収した化け物退治に一人で行ったんでしょう。そんな危険な事をして、怒られて当然だと思う」
「いや、あの時はそんなに怒られなかった。一番怒られたのは桃香の塚を作った時だな」
「それも聞いたよ。どうして手で掘ったの? せめて木の枝とかを使おうよ、文明人なんだから。それに破傷風はね、怖いんだよ」
「わかってる。桃代と同じ事を言うな。それよりキーコ、これから行く場所をスマホで調べてくれ。もしかすると、場所自体に曰くがあるのかも知れない」
「ちょっと待ってね。すぐに調べてみるから・・・ ・・・ ・・・ねぇモンちゃん。これ、近くに血洗い池なんて名前の池があるけど、これはどうなのかな?」
「んっ、どうだろうな? でもな、血洗い池とか、首洗い池なんて日本各地にある。ほら、農民が落ち武者を殺し、首を落として持って行けば報奨金を貰えた、なんて時代があったからな」
「酷い。じゃあ、その時に落とした首の血を洗ったから、血洗い池や首洗い池になったの? 残った胴体はどうなったの?」
「まあ、名称はそうだろうな。胴体の方は詳しくは知らないけど、身包みを
「死者の身包みを
「そういう事だ、生きてる人間は残酷だ。キーコだって、それで酷い目に遭ったんだからな」
「じゃあ、この血洗い池に何か怨念のようなモノがあって、変な事に巻き込まれたのかな?」
「わからない。だけど決めつけるな。決めつけると初動でミスをして、未解決事件を増やした昔の警察のようになるぞ」
「うん、わかった、気を付けるね。他に曰くがありそうな地名とか噂話は、ネットにはないよ。あとは航空写真を見ると、大きな森が広がってるから、そこではぐれたのかもしれないね」
「森かぁ? 厄介な場所だな。まあ、何事もなく、無事に見つかればいいけどな」
俺はナビを見ながら、順調に進んでいる。
ただ、昨日のユリの同級生の話を思い出し、ルームミラーも気にしている。
誰も居ない後部座席に、灰色の顔をした死体や幽霊が居たらイヤだな。
あのバカたれ。
一人で車に乗る時に、思い出したら怖いだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます