第29話 目的はですね…

 僕もビールを頼んだ。ガブちゃんがあまりに美味しそうに飲むので、僕もつられたかっこうだね。いつもはハイボールあたりにするけど…。


「それで…、この幸運を授けることの目的は? ああ、おねえさん、彼にビールね、同じのでいいよ」

「ありがとうございます。本当にうれしいです」

 彼のジョッキは見事に底まで飲み干されている。楽しいよ、ガブちゃん。でも、お話はしてよね。


「気味が悪いよ。いいことばかりでさ…なにか揺り返しがあるんじゃないかってね。かえってビクビクするよ」

「謙虚な方ですね、小杉さんは。私も幸運を授けたかいがありました」

「目的は?」

 ジョッキが来た。うれしそうだね。ガブちゃんの目が語っている。

“飲んでいいですか? 待ちきれなくて”

「いいよ、まずは飲みなよ、食べなよ…。そのあと目的は聞かせてね」

 返事の代わりに大きく頷いて、ガブちゃん、今度は三分の一くらい飲んだ。で、遠慮なくニラタマをさらに食べた。残りは三分の一くらいになってしまった。


「目的はですね…」

 うん。


「わかりません」


 ガブちゃんのジョッキはすでに彼に抱えられていたので、僕は思わず手元のおしぼりを素早くにぎり、投げつけるわけではないが肩くらいまであげた。

天使にそんなことできないよね、


「何か?」

 かわいい女性の店員さんが、僕が手をあげたのかと思って声をかけてきた。

「ああ、こっちにもビールね、でもさっき頼んだから、枝豆ください」

 なんとかとりつくろった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る