第26話 人間が一番難しい
チエーン店の居酒屋はうるさすぎもなく静かすぎもなく、適当ににぎわっている。
これくらいがちょうどいい。時間が少し晩いからかもしれない。
「歴史上、急に突然ハネタ人っていますよね。いままでそんなにツイてなかったのに突然運が巡ってきて歴史に名をなすとか、莫大な財産を築いたとか、大発見、大発明、偉業をなした人とか、思いつけばいませんか?」
何人かね、そりゃあいるけれどさ…。僕はちょっと頷いてみせた。
「全員が全員とは申しませんし、私もわかりません。たまに同僚からこっそり聞くだけですし、これは個人? 個匹? 情報なんで誰とは詳しく言えませんが、今の小杉さんの状況も同じようなものです」
個匹? またひっかかるが、とりあえず流す。つまりこうゆうことだな。
「幸運の女神…、でも、女神じゃないね、ガブ…」
「天使、ガブリエル…、通称ガブちゃんです…。なんかな~、ちょっとな…、でもいいかな」
なんだ、意外と気に入っているんじゃない、ガブちゃん。
「今の小杉さんの幸運の原因がこのガブちゃんにあることは確かです。そう仕組みました。私が犯人です」
素直だね。
「うん、それはうすうす感じてたよ」
「なぜ?、目的は? どうして小杉さんなの? そんな感じですか?」
僕はうんうんと頷いた。ガブちゃん、このことを話すのは慣れているようだしね。訊きたいことというか、いろいろと言葉にひっかかることはあるけれど、たぶんガブちゃんうまく話してくれるんだろう。
でもビールっておいしいな。ガブちゃんが飲む姿をみているとこっちも幸せになってくるよ。ガブちゃん、実に美味しそうに飲む。
「何度も他の方にも説明しているんですよ。わかりますよね、なんとなく…。で、いっつも思うんです。”人間が一番難しい”。いろいろとご存知なのと探究心ってやつですね。本当、むつかしいんです」
ふ~ん…、またひっかかる。“人間が一番難しい”って…。
こっちは人間だし、それ以外になったことないからよくわからないよ。
「まずは、なぜ小杉さんか?」
聞きましょう。僕はだまって頷いた。
「誰でもいいんです」。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます