ある午後
あたたかい水に
蜂蜜を溶かしたような午後でしたので
硬く締めたはずの窓の蝶番が
緩むのは仕方のないこと
あの子が吹くリコーダー
高いレの音がうまく出ずとも
それが音楽であることは
わたくしにも判ります
片方の眼から水があふれて
空白を塗りつぶす
それが束の間の錯覚であろうと
栗鼠の鳴き声のはざま
一音一音なぞられていく旋律が
トリステ、という呪詛すら煙に巻き
わたくしをただひたすらに
甘やかしていくのです
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