2-4 解決策

「ちょっと考えさせて」


(コントって、私、声に出した? いやいや、出してない。記憶の半分が消えるっていうのも確かに……丈瑠の記憶を消すとやばいかも……あっ、ダメダメ私ってなんだかあの店員の話、信じ始めてる。うーん、一体どうなってるのー)


 成美が混乱しているのを察知して、梢女が話しかけてきた。


「何か気がまぎれる新しい事を計画なさってはどうでしょうか」


(もう、この状態が私のストレスだわ。はちゃめちゃな事を言って、梢女って店員を追い払っちゃいましょう)


「そうねえ、私の家にブン太って猫がいるんだけど、その猫が私に懐いてて可愛いのよ。オス猫でね。だからブン太みたいな彼氏がほしい。……ていうか、ブン太を彼氏にしてよ」


 我ながらよく思いついた。そう思えるほどとっぴな考えが成美の口から出た。


(どうよ。そんな事できないでしょう。早く私にごめんなさいして、サッサと消えちゃって! )


 そんな成美の願いとは裏腹に、梢女はあっさりと返答した。


「良い解決策を思いつかれましたね。それではご希望通り対応させていただきます」


 一礼してから去っていく梢女の背中を見ながら、もしかして取り返しのつかない事をしてしまったのかもしれないという不安が成美の頭をよぎった。


「もうー!体洗って帰ろ」


 空にはいつのまにか星が見えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る