第41話 勇者との共闘

(なんでここに......)


 ミカエル様たちが来るのは、最初の打ち合わせがあったからわかる。だが、なぜロンドたちまでここへ来てくれたのか......。


「何ぼさっとしているんだ。今は目の前の敵を倒すぞ」

「あ、あぁ」


 ロンドは、すぐさまアグラティア様に攻撃を仕掛け始めた。


(ここまで強かったのか......)


 ロンドのことを弱いと思っていなかったが、ここまでアグラティア様と対等に戦えるとは思いもしなかった。俺もロンドに続くように戦闘に加わる。


 俺が攻撃を仕掛けて、隙を見せてしまうとロンドがカバーを入れてくれ、俺も同様にロンドが隙を見せてしまった時に援護する。このような攻防を数分間続けて思う。


(やりやすい)


 クロエとはまた違ったやりやすさがある。何て言えばいいのだろうか。クロエの場合は、お互いがアイコンタクトをして連携が取っているが、ロンドに関しては、違う。


 連携をとるというよりは、こいつなら大丈夫だ。という安心感がある。いや、クロエに対しても安心感はあるのだけど、ロンドの場合は実力が一緒だからと言うような感覚で戦っている感覚だ。


 そう考えている時、ロンドがこちらを向きながら


「今魔のまま戦っても時間が掛かる。だから何か案は無いか?」

「う~ん」


 案と言われてもなぁ......。はっきり言って、先程まで一人で戦っていた時も隙を見つけることが出来なかった。攻撃が当たったのも、ほとんどが奇襲や相手が見たことも無い攻撃ばかり。


(そうだ!!)


 俺はすぐさま、アグラティア様と一旦距離を取り、作戦の内容をロンドに伝える。すると、少し驚いた表情をしていたがすぐに頷いた。


「わかった」

「じゃあ行こうか」


 まず最初に俺からアグラティア様へ魔剣グラム火玉ファイアーボール風切エア・カッターの複合魔法を付与させて、攻撃を仕掛ける。だが、アグラティア様は知っているかのように剣では受けず、すべての攻撃を避ける。


(クソ......)


 その時、ロンドが加勢してきてアグラティア様に斬りかかる。だけど、それさえも受け流されてしまう。そんな攻防を何度も繰り返していくと、徐々にアグラティア様が俺たちの攻撃に慣れてきて


「お前たち、もうちょっとだから......」


 そう言いながらも、鋭い攻撃を何度も仕掛けてくる。それを俺とロンドは何とか受け流しながら、気を伺う。そこから何度も斬り合いが続いた時、ロンドが一瞬膝を崩しかける。


 それをアグラティア様は見逃さず、ロンドにトドメを指しに行く。俺はそこで重力(小)をアグラティア様に放つ。すると、アグラティア様の攻撃がギリギリのところで逸れる。


(今だ!!)


 俺はこの機を見逃さず、空間転移(小)を使い、アグラティア様の真後ろに立ち、魔剣グラム風切エア・カッターを付与させてアグラティア様の首元を斬り落としに行く。だが、それもわかっているかのように避けられてしまう。


(かかった)


 避けた先にはロンドが立っており、怯んだ一瞬を見逃さずにアグラティア様の首元を斬り落とした。


 そして、死んでいるかを確認しに行くためにアグラティア様の首元なども見に行くと、笑った表情であった。


(クソが......)


 本当に胸糞が悪い。普通は殺した人がこんな表情をするなんておかしい。それなのに先程クロエやアミエルさんと戦った三人の人たち、そしてアグラティア様すべてが笑顔であった。


 倒してほしいと言われたからやったが、それだとしても本当に気分が悪い。


(それもこれも、あいつが悪い)


 そう思うしかなかった。そして、俺とロンドはすぐさまクロエたちの援護に向かったが、すでにほとんどの戦闘が終わっていた。


 ミカエル様率いる天使の方々がアルゲによって召喚された死人をほぼ倒し終わって、防衛に徹し始めていた。


(あれ? あいつは?)


 ミカエル様の元へ行き


「アルゲはどこに行きましたか?」

「アルゲとは?」

「少女みたいな人が居ませんでしたか?」

「え? 見ていないけど?」


 それを聞いて、俺はすぐさま走り始めた。それに続くようにロンドも後をついてくる。


「メイソン、どうしたんだ?」

「さっき戦った人いただろ?」

「あぁ。それがどうした?」

「あの元凶を作った魔族がさっきまでここにいたんだ」


 それを聞いたロンドは驚いた表情でこちらを見て来た。


「それは、どういう奴なんだ?」

「リーフを殺した時にあった少女だ」

「え......あいつか」

「あぁ。俺はあいつを殺さなくちゃいけない」


 そう。バカルさんから始まり、ドラゴンゾンビになってしまったクロー。そして今回戦った方々。俺がアルゲを殺さなくちゃその人たちが報われない。俺はそんなの嫌だ。今まであった人たちが悪い人なんて思えない。だからこそ、あいつだけはやらなくてはいけない。


(生かしていてはいけない)


「俺も恨みはあるしついて行くぞ」

「あぁ。頼む」


 はっきり言って、俺一人で倒せるとは思えない。だから、ロンドについてきてもらえて助かる。そう思いながらも、ここら辺一帯を走り回ると、魔方陣らしきものが見えた。


(あそこか!!)


 すぐさまそこへ行くと、すでに体が消えかかっているアルゲがいた。

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