第36話 死神との戦闘


 それを見て、俺とクロエは茫然とする。


(ここに死神なんていなかったよな?)


 ゴブリンの行動と少年が先程使った魔法を考えると、昔リッチが使っていた死者蘇生だと思っていた。だけど、今死神を呼び出したということは、俺が知らない魔法を使っているということ。


(って、今はそれどころじゃない)


 まずは目の前の死神を倒さなくちゃいけない。そう思い、クロエにアイコンタクトを送りつつ道具収納アイテムボックスから魔剣グラムを取り出して、死神に突っ込んでいった。すると、死神はいともたやすく自身が持っている鎌で受け流されてしまう。


「あはは。誰であろうと死神には勝てないよ」


 少年は蔑むような目でこちらを見ながらそう言った。


(そんなのやってみなくちゃ分からないだろ!!)


 俺は、何度も死神に攻撃を仕掛けるが、すべてが受け流されてしまう。すると、クロエが


「私が時間を稼ぐ」

「わかった」


 死神が俺に向かって攻撃を仕掛けてくるのを、クロエが何度か防いでくれて、隙ができた瞬間に俺が略奪を使おうとした時、徐々にこちらへ近づいてきていたゴブリンに攻撃をされる。


「う......」


 すぐさま、ゴブリンを倒して自動回復を使う。


(何度も略奪が使えればいいのだけど......)


 略奪を使うということは、それなりに魔力を使うということ。それ以外にも、強力な敵や複数体に使うと、一気にスキルが会得できてしまうため、キャパが崩れてしまう。


「メイソン!!」

「俺はいいから、死神を頼む」


 俺は当たり一面にもう一度、炎星アトミック・フレアを放つ。すると、ゴブリンやコボルト、ウルフなどが瞬殺される。それと同時に死神とクロエの方にも行く。死神は鎌で防ぐが、仲間であるクロエに当たりそうになったその時、完全守護プロテクションで守られた。


(ルーナ!!)


 広範囲攻撃である炎星アトミック・フレアなのだから、仲間に当たってしまう可能性も考えていたが、それをルーナは考慮してくれていた。


(本当にありがとう)


 そして、あたりにいる魔物が一層されたので死神のところへ向かい、クロエに加勢する。


「よかった。結構やばかった」

「悪かった」


 クロエはすでに結構なダメージを受けており、危うい状況であった。


「クロエ、後一回だけ時間を稼げないか?」

「わかったわ」


 俺が身体強化(大)を使ったところで、クロエは一瞬にして死神の目の前に行き、斬りかかった。だが、案の定死神はその攻撃を防がれるが、俺もその瞬間に死神へ斬りかかる。すると、死神は一瞬怯んで後ろへ後退していく。


(今だ!!)


 俺は空間転移(小)を使い、死神の後ろへ回った。そして略奪を使う。


死鎌デスヘルス


(え?)


 奪えたスキルの少なさに驚きを隠せなかった。こいつはこれしか覚えていないで、ここまで対等に戦っていたのか? それにまだ死鎌デスヘルスを使われていない。もし、死鎌デスヘルスを奪えていなかったらどうなっていたのか。


 そう考えると、ゾッとした。その時、死神は俺の方を向きながら攻撃を仕掛けてくる。


(やばい)


 俺は瞬時に空間転移(小)を使い、クロエの位置まで戻る。


「どうだった?」

「一応は盗めたけど、あいつは元々が強すぎる」

「そっか。じゃあ私に案があるわ。カバーをお願い」

「あぁ」


 そして死神が俺たちの元へ着た時、クロエの指示通り俺が盾として受け流す。すると、クロエは何やら魔法を唱え始めた。


「後退して!!」

「わかった」


 俺が瞬時に後退すると、クロエが尖った石を何度も死神に攻撃した。


(こんなことが出来たのか!?)


 だが、そう思ったのも束の間、死神はいともたやすくその攻撃を防ぎ、もう一度俺たちに攻撃を仕掛けてくる。それを、俺が受け流しつつ戦っていると、クロエがニヤッと笑った。


「もう終わりよ」

「え?」


 その瞬間、地面に複数の小さな魔方陣が出てきて、死神に向かって石の刃が突き刺さった。


「メイソン今よ!!」


 クロエに言われてすぐ我に返り、死神の首を斬り落とした。すると、クロエが俺の方向へきて


「これで終わったの?」

「わからない。でも死神は死んだはず......」


 いや、元々死んでいるんだけど、首を落としたということは動くことはできないと思う。そう思いながら、もう一度死神にトドメを刺して、鎌を蹴り飛ばして違う場所へ移動させる。


 その時、少年が驚愕した表情で俺たちの方を見て来ていた。


「君たち。何者?」

「魔族に名乗ってなんの意味があるの?」

「......。死ね」


 少年がそう言うと、地面に隠れていた魔物の死体が一斉に俺たちへ攻撃を仕掛けてくる。だが、それを後方からルーナが守護盾プロテクト・ガードで守られる。魔物たちが怯んだその気を逃さず、俺は風切エア・カッター炎玉かえんだんを組み合わせて一掃した。


 すると、足音が聞こえて、アメリアさんとルーナも戦闘が終わり、こちらに合流する。その時、少年が逃げるようにこの場から立ち去っていこうとした。


「逃がすか!!」


 俺は高速移動を使い、少年の目の前に立って斬り倒した。


「お、終わったのか......」


 後ろを振り向くと、三人とも安堵した表情でこちらを見ていた。


(よかった)


 案の定、少年を倒したことによって、魔物の数が一気に減っていた。それを確認して、俺たちは騎士たちが居るところへ後退し始めた。

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