第2話

 それは突然起こった。

 何もない道でこけるかのように。

 もっと大げさに言うならば、青天の霹靂というやつだ。

 その例えどおりに、何もないところから、俺と光弥は

 吸い込まれることに驚くヒマはなかった。

 気づけば俺は一人で、暗闇にいた。


 △▼△

  

 少し前 

 朝のホームルームが終わり、俺は今日から本格的に始まる授業の準備をしていた。

 だが、教科書はあったものの資料が見つからなかった。

 不味い、初めからこんなんでは先生に目をつけられてしまう、どうにかしなくては、と俺は焦りまくり光弥はそれをニヤニヤと眺めていた。

 

 時間はあっという間に過ぎ、既に来ていた授業の先生はチャイムが鳴るのを待っている。

 そして鳴るチャイム、終わったと絶望する俺、吹き出した光弥。


「始めまーす、日直号令を」

 

 と、先生が指示を出したと同時にそれは起こった。 

 俺は見たのだ、丁度笑いを堪える光弥を小突こうと思って横を向いたから。

 光弥も見たのだろう、俺の方を見ながら笑いを堪えていたから。

 互いの背後に渦巻く、暗闇を。


 こうして、俺が中学時代から密かに楽しみにしていた高校生活は、それどころか全ての日常が、俺の手から奪い去られていった。

 

 これだけは言える。例え凄い能力が貰えたとて、心躍る世界であったとて、俺が心の底から異世界それを望んだ事は一度も無かった。

 

 だって俺は今の世界に満足してたんだから。

 ………光弥は、そうじゃなかったのかもしれない。口では俺と同じことを言っていたし、そのための行動をし続けた。

 

 でもあいつは、自分から元の世界の話をすることは殆どなかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る