いつのまにかドラゴンでした

すなる

プロローグ

俺は34歳独身どこにでもいる普通のサラリーマン。赤羽田イザ。

毎日残業、休日出勤は当たり前、いわゆるブラック企業で勤めていた。


「私よりもっと相応しい人がいると思うから」

と、長年の付き合いの彼女にも愛想をつかされ。


趣味のアニメ鑑賞やオンラインゲームもこの数年ろくにやれていない。

仕事漬けの毎日に心身はもうボロボロだった。


自分で言うのもなんだが。元々、責任感が強く真面目な性格だったので、自分が居なくなると周りに迷惑をかけてしまうから自分だけは頑張らないと、ずっと堪えてきた。


そしてある日。いつものように徹夜で作業をしていると突然目の前が真っ白になった。

「やばい…意識が遠のく。最近休めてなかったからなぁ…このまま過労死とかしちゃうのかな。あーあ。俺は何をしているんだろう。」


『……やっと見つけた。』


自分のことを誰も知らない世界で0からリスタート出来たらいいのに…。



『…リスタートしてみる?』



だけどそんな場所あるはずないし。



『あると言ったら君はどうする?』



そんな場所があったら苦労しない。

「あるなら教えてくれ。」



『わかった。じゃあ準備はいいかい?』



準備?え?誰だ さっきから頭の中に微かな声が響いてくるのが聞こえる。



目の前が光に包まれた。

目が慣れてくると、一人の少年が目の前に座っていた。

髪は透き通るように白く、瞳は全てを見透かせるように澄んだ蒼色をしている。頭には小さなツノのようなものも付いている。



『始めまして。僕は君達の世界で言うところの神様ってとこかな?』



まてまて、これは夢か?神様?この子は何を言ってるんだ…?

「俺は死んじゃったのか…?」



『すぐに信じられないのも無理はないね。君達の世界の神は居なくなって久しいから、神の存在を受け入れられないのは仕方ない。』



「神が居なくなって…?元々居たって言うのか?馬鹿馬鹿しい…」



『仕方ないなー。順序が逆になっちゃうけど、少し目を閉じて。』

そういうと少年は右手を翻した。



『ほら、これなら信じるかい?』



不思議な光とともに身体が光に包まれ軽くなった気がした。目を開けると。

急に少年が大きくなった。



『ふふっ、不思議な顔をしてるね。僕が大きくなったと思ってるでしょ。違うよよく見てごらん?』



そう言うと次は俺の前に鏡を出した。

そこに写っていたのは小さな蜥蜴…いや少し違う?角と羽が生えてる?これは…まさか。



『君をこの世界であるべき姿に変化させた。どう?これで少しは信じてくれた?』



「…神様かどうかはともかく、特殊な能力があることは理解したよ」



『ハハッw まぁ少しは信じてもらえたみたいだからそろそろ本題に入るね。』

『君にはこれからこちらの世界に転生して貰って、世界を救って欲しいんだ。』

「別の世界?俺が救う?ただの元サラリーマンに世界を救えると?」



ファンタジー小説やアニメで良くあるやつだな。ドラゴン?勇者?世界を救うか。

やはりこれは夢…。



『君にはその力がある。僕も出来る限りの手助けはするし大丈夫。心配はないよ。』


夢なら少しは俺の都合に合わせてほしいな。

「わかったわかった。神様の力を貸してもらえるのはありがたいが、俺にそんな力は無い。やり直せると言うなら世界を救うよりも普通の暮らしをさせて欲しい。」



神様はにやりと微笑んだ。

『んじゃとりあえず了承ということで!いいね?いっくよー!』



「ちょっと待った!まだ話が――」




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