婚約者候補たち

 ミスティは約束通り、私をフォレー領の銅山につれていく。

 嫌々出発の準備をしていたわけでもなさそうだから、私が銅山の内部事情を知っても特に問題がないのだろう。それどころか、観光地図を取り寄せて、あれやこれや印をつけている。

 

 フォレー領は王都から遠い。カヤロナのような小さな国でも数日馬車を乗り継ぐ必要がある。

 領地を巡ったときに、馬車の退屈さは味わったけれど、王都でミスティの帰りを待ち続けるよりはましだった。

 フォレー領に向かう馬車の中、寄りかかって眠るミスティと体温を分け合って本を読んでいる。

 こうして一緒にいるなら、退屈でもいいやと思えるのだから、竜の血は不思議だ。

 

 前回、領地巡回でフォレー家に挨拶に寄ったときは、晩餐に招かれただけですぐに次の領地へ出発しなければならなかった。今回はゆるく日程が組んであるようだし、少しはフォレー領を観光できるかもしれない。

 

 それにしても、バロッキーがフォレー家と協力して銅山を経営することになると明かされた時は驚いた。

 バロッキーはずっと家名を隠して経済活動を行ってきた。流通のほとんどがバロッキーの名を持たない分家を通して行われ、巧みにバロッキーの名を隠してきたのに。

 今だって、竜の目を持った者が店頭に出て商売をしたら、王都なら蜘蛛の子を散らすような騒ぎになるだろう。

 ミスティが先頭に立って銅山開発をすると宣言するのは、この国にとって、大きな変化だ。

 バロッキー家と旧辺境伯であるフォレー家の結びつきを世に知らしめるのは、政治的な意味合いも極めて大きい。

 

(まぁ、順調に進んでいるというのなら、トムズも、他の竜たちも賛成だという事なのよね?)


 肩にかかる体重が重くなってきたので、ミスティの頭を膝の上におろす。

 起きる様子はなく、当たり前のように、ゆるゆると腰に手を回して膝に頬を擦り寄せてくる。

 

「平和そうな顔しちゃって……」


 面倒ごとを徹底的に避けてきたバロッキー家が、このミスティを先頭にして、初めて歴史の表に出るのだ。


 

 ✳︎



「ダグラスの家に泊まるんだよな……」


 フォレー領が近づいて来て、木々に広葉樹が混じる頃、ミスティは気弱な声を出した。


「いつもはどこに宿泊していたのよ?」

「サリとヒースの宿に泊めてもらってた。銅山の近くでは、そこだけがバロッキーの分家の持ち宿なんだ。ダグラスの家は人の出入りが多くて落ち着かないから、助かってたんだけどさ……」


 どうにも歯切れが悪い。


「じゃぁ、またサリのところに泊まればいいじゃない」

「狭いベッドに二人で寝ることになるけど、いいの?」

「私にベッドを譲って、ミスティはソファで寝れば?」

「いや、この場合、クララベルのほうが分家の娘なんだから、本家の俺にベッドを譲るべきだろ」

「ああ言えば、こう言うね」


 呆れて頬杖をつく。 

 既にいろいろな暇つぶしを試してしまって、こうやって軽口をたたきあうくらいしか時間をつぶせずにいる。

 

「まぁ、冗談はさておいて。サリの所は狭いからフォレー家にしたんだよ。俺だけ別に泊まるのも不自然だろ」

「あんなにダグラスとコソコソ仲良くしていたくせに、へんなの」

「だからさ、ダグラスがどうこうじゃないんだって……」


 ミスティはまだモゴモゴと言っている。

 

(サリやヒースと夜中に話したりするのは面白そうだし、別に狭くったって、ミスティと一緒ならバロッキーの宿でよかったのに――)


 そこまで考えて、竜の血のせいですっかり頭がおかしくなってきているのに気がついて黙った。

 最近この感じが、純粋にミスティに対する好意なのか、竜の血による執着なのか区別がつかない。

 窓の外を見ればおかしな顔の生き物がたくさん歩いている。


「……あ、ミスティ! 外を見て! 見たことのない動物が歩いてくるわ。馬や牛とはちがうわよね、鹿かしら?」


 馬車の行く手を家畜の群れが横切る。レトが馬からおりて、杖を持った牧者と話をしている。

 そうしているうちに、あの愛嬌のある家畜は荷車や馬車を引いたりするのだとミスティが得意げに話し始める。

 ミスティが説明しながら画用紙に崩した画風で家畜が飛び跳ねる戯画を描き始めたので、残りの道のりはとても楽しいものになった。

 


 ✳︎


 

「ダグラス、久しぶりね。皆は元気にしているかしら?」

「お待ちしておりました。長旅でお疲れでしょう。妹は女学園の寄宿舎に行っていて留守ですが、皆変わりなく暮らしております。領地の見回りに行っていますが、すぐに父も戻りますので」


 ダグラスはいつもの通り温厚な笑みで、私とミスティを迎えた。


「そう。この間は忙しかったから、今度は少しゆっくりできるといいのだけど」

「そうですね。時間ができましたら、どこかにお連れしましょう」


 玄関先でダグラスと話していると、遅れて少女が二人やって来る。

 片方には見覚えがあるような気がする。


「クララベル様、ご機嫌よう」


 足音を立てて歩いてくる黒髪の少女と、それを引きとめようとする少女は、対照的な色合いだ。

 淑女のふるまいとは遠い騒がしさに、ダグラスが少し眉間に力を入れた。


「ヘラ、クララベル殿下の前でそのように……失礼いたしました。クララベル様、こちらは……」


 ダグラスが気にして、少女たちの無礼を詫びるが、恐縮されると居心地が悪い。

 

「あら、いいのよ。公式の訪問というわけではないのだから。ねぇ、黒髪のあなた、昔会ったことがあるのではない? 夏にフォレー領に来た時に見かけたわ。そうそう、私たちが沢に出かける時にダグラスについていくって泣いていたお嬢さんよね。その時は、まだこんな小さいころで……あの後、何度が手紙をくれたわよね、私――」


 幼いころに訪れたフォレー領の明るい色合いの思い出が浮かんで、私は気安く少女に話しかけた。しかし、少女が笑みを凍り付かせているのを見て、急速に語尾を小さくする。

 大きな黒い目の目じりが、吊り上がっていく。


「ごめんあそばせ。私、もう子どもではありませんの。ゆくゆくはフォレー領をダグラス様と盛り上げていくつもりですので」

「あら、まぁ、ごめんなさいね。こんな可愛らしいフォレー婦人候補がいたのね。ダグラスってば、婚約者が決まらないだなんて言っていたから、心配していたのよ」


 何か良くないことをいっただろうか。ヘラはツンとすまして、もう何も言わない。

 ダグラスの方を振り向けば、ダグラスもミスティも一瞬ものすごく変な顔をした。

 私、何か間違ったことを言っただろうか。


「フォレー領へようこそお越しくださいました」


 もう一人、ヘラの後ろで身をかがめて礼の姿勢をとっている令嬢がいる。


「お初にお目にかかります。ユーノ・ドルトンです。ヘラとともに領地の正興についてを学んでおります」

 

 ああ、なるほど、ダグラスの婚約者候補は一人ではなかったのだ。これは、うっかりとしていた。

 

「ごきげんよう、ユーノ。次代を担う婦人候補がたくさんいて、フォレー領は安泰ね。ええと、ドルトン……ドルトンという家名、聞き覚えがあるわね。ドルトン……ええと、ニーナ・ドルトン? 子ども向けのお話の作者なのだけど、身内の方?」

「はい! ニーナ・ドルトンは私の祖母です」


 私がなんとか取り繕って話しかけると、表情を明るくしてユーノが顔を上げる。

 下を向いていて分からなかったけれど、おとなしそうな顔には。強い意志の見える灰色の瞳が輝いている。


「まぁ、そうなのね。私、子どもの頃、たくさんおばあ様のお話を読んだわ。あんな楽しいお話を直におばあ様から聞くことができるなんて、羨ましいわ。もし、時間があるようだったら、御挨拶できるかしら」

「ありがとうございます。残念ながら、祖母は数年前から膝を悪くして、カミアン領の実家で療養しております。でも、王女様にそう言っていただけて、光栄です。殿下にお見舞いいただいたこと、手紙で伝えておきます」


 自分が心を動かされたものを作った人には、なるべく会っておきたい質だ。カミアン領なら王都から遠くないし、会いに行く機会があるかもしれない。


「そう、よろしくね。私、あの絵本が大好きだったわ」

「姫様、その本は私の父がお持ちしたのですよ」


 ダグラスが目を細めれば、ユーノも同じよう笑みを浮かべる。


「あら、そうだったのね。挿絵も素敵な本でね……」 


「あの……」

 

 思いがけない出会いに、楽しかった絵本の内容をしゃべり続けそうになると、ヘラが咳払いをして、話を遮った。何だか不機嫌そうだ。

 

「こちらでずっと立ってお話しばかりされて、足が疲れてしまいましたわ。どうぞ客間へいらしてくださいませ」


 ヘラが先に立って歩き始める。やっぱり何か気に障ることがあったのかもしれない。

 

「わ、わかったわ。行きましょう」


 私は瞬きをしながらヘラに続く。

 身分のある立場では、直接不機嫌さをぶつけられることは稀なので、新鮮といえば新鮮だ。


 さすがに思うところがあったのか、ダグラスがヘラに何か耳打ちした。

 途端に、ヘラはユーノを引きずるようにして去っていった。ユーノは急な退場に振り返り、頭を下げている。

 

「姫様、ヘラがすまないね」

 

 私は事情がわからず、瞬きを繰り返す。


「あの子、どうしたの?」

 



  

 客間で休憩している間に戻ってきたフォレー夫妻に挨拶を済ませ、その後、部屋に案内された。

 荷を解いてくれたレトが自室に戻っていくと、ミスティは部屋の鍵を確かめて、厳重に錠をする。

 

 王都の城は女官や使用人がよく出入りするため、私たちが生活する空間で鍵がついている部屋は少ない。フォレー地方の家ではどの扉にも内鍵があって、それぞれの部屋を施錠できるようになっている。

 

 ミスティは鍵を閉めてから、思い出したように隣の部屋に行って、隣室の様子まで確かめてきて、また鍵を閉めた。ここに来てから、あまりしゃべらないし、なんだか様子がおかしい。

 

「ダグラスに私を譲るつもりでいるにしては、厳重ね。夜這いなんて風習この地方にないわよ」

「違うって。ダグラスを警戒しているんじゃない。それに……今はクララベルは、俺のだし」


 むずむずするような言い回しをするミスティの鼻に指を突き付けて、いつものように高飛車に告げる。


「勘違いしないでよね、逆よ。ミスティが、私のものなのよ」


 鼻を上向きにされて、ミスティは突きつけた指をにぎって別の方を向ける。


「そんなこと言うならさ、あのヘラって女が俺に近づけないように、しっかり追い払ってよ」


 ミスティはため息混じりに言うと、頭を掻く。


「ヘラ? あの子、ダグラスの婚約者候補なんでしょ?」


 ミスティは少し言い出しにくそうにして、私にヘラとのことを話し始めた。

 

「前に王都のフォレー家の屋敷で会ったときに、俺と二人きりになろうとしたり、自画像を描けって、上着を脱いで薄着になったりしてさ、すっごく怖かった……わかるだろ? 竜はああいう一人に心がない奴が猛烈に苦手なんだよ」

「なによそれ、聞いてないわよ。何で言わなかったのよ」


 ミスティが銅山のたくらみを教えてくれるようになったのは、つい最近だ。

 別にミスティが悪いわけではないけれど、片眉を上げて睨むと、ミスティは慌てる。


「銅山のことを話す前だったし。でも、誓って俺は何もやましいところはないから」

 

 竜がうつろいやすい心を嫌悪するのはわかる。

 それなら、一途にミスティを思う乙女が現れたら、ミスティはどんな反応をするのだろう。

 ミスティだけを想い、ミスティだけに心を捧げるようなそんな相手になら、ミスティの心は動くというのだろうか。


(もし、私がミスティを愛していると言ったなら……)

 

 馬鹿馬鹿しい考えが浮かんで、強く頭を振る。

 竜は早いうちに相手を決める。私では本当の番の代わりにはならないのだ。

 

「いやだわ。人の物を欲しがるなんて、本当に困ったお嬢さんね」

 

 何でもないように笑って言ったけれど、言った自分の心も痛んだ。

 それにしても、本当に困ったものだ。ヘラをただの生意気なお嬢さんとは思えなくなってしまった。竜の悪いところだけれど、ミスティに色目を使われたと思うと、胸の中にどす黒いものが膨れ上がってくる。


 ――この感じは危ない。


 社交の場で、嫉妬なのか執着なのかもわからない感情に支配されたら、王女としての仕事に支障が出るかもしれない。


「あいつがいるから、フォレー家には来たくなかったんだよな」


 ミスティがベッドに腰掛けて脚をバタバタさせるので、私は小さい子どもにするように頭をポンポンと撫でる。


「ミスティは私の背中に隠れていればいいわ。社交は私の守備範囲よ。私が守ってあげるから」

 


 

 晩餐はフォレー夫妻とダグラスと私たちだけだったので和やかに済んだ。朝が早いフォレー夫妻に就寝の挨拶をして、そのあと客間に移動して、食後のお茶を勧められた。


 例の令嬢二人がやってきて給仕をする。

 働いているのはユーノばかりで、ヘラは自分の前にお茶が置かれても動こうとしない。それどころか私の向かいに座り、私を質問攻めにしている。

 

「姫様、どうしてそんな色白なんですか? 何か特別な手入れをなさっているの?」


 これには女官たちの努力だと答えた。化粧品を選んで手入れを工夫するのは女官たちの仕事だ。


「姫様が着ていたドレスと同じ物を取り寄せたのですけれど、着ていく先がないのです。お城の行事に参加させていただけません?」


 そう聞かされた時には少し困った。城の行事で爵位のない者が入りこめる茶会は少ない。

 それならば、地方豪族の若者が参加する行事にダグラスの妹と参加したらどうかと提案した。

 

 ダグラスは笑い顔を浮かべていたが、目が笑っていなかった。

 なるほど、ダグラスは怒るとこういう顔をするのね。


「あら、王女様、そんな質素な指輪をなさっているの? 銀の台座に何の石ですの? おかしな色。私の物を何点かお譲りしましょうか?」


 気に入っているから問題ないと答えて、申し出も断ったが、石を用意したミスティの機嫌がすごく悪くなった。大人しく茶を飲んでいるが、いつもなら足を投げ出して悪態をつくころだ。

 皆がいよいよ不安げに私を見てくるのがわかる。

 私が怒りださないか心配しているのかもしれないが、小さい頃から無礼な事を言われるのには慣れている。いちいち反応してはいられない。

 

「姫様、ミスティ様に私にも絵を描いてくださるように頼んでいただけませんか? お時間はおかけいたしませんわ」

 

「あ……ええと――」

 

 私はまさか直接願われると思っていなかったので、ヘラの申し出に答えを用意していなかった。


 ミスティは嫌だといっていたが、その実、彼はバロッキー家の万能の絵描きなのだ。注文主の依頼には過不足なく応えられる。

 

「ヘラ、ミスティは私の夫だけれど、画家であるミスティは私の所有物ではないわ。私に許可を求めるのは違うわね。絵の注文をしたいのなら、バロッキー家に商談としてもちかけるのがいいかもしれないわ」


 私が遠回しなことを言ったので、ヘラは分かりやすく機嫌を悪くした。


「なら、ミスティ様に直接お願いいたします!」

 

 困ったことになった。

 私が守ってあげるなんて大きなことを言ったのに、このままでは押し切られてしまいそうだ。


「――それはかまわないけれど、ミスティに描かれるのは、恐ろしいことよ……」

 

 何かちゃんとしたことを答えるつもりだったのに、考える前に口が動いた。

 

 いつもならこういった社交場の応戦では相手がどう答えるのか、威圧するのか宥めるのか、いろいろと考えてから言葉を発するのに、まぎれもない本心が漏れ出た。

 

 そうだ、ミスティに描かれるというのは、本当に恐ろしいことなのだ。

 

「竜の目は……すべてを見透かすわ。あなたが隠している心のありようまで描かれてしまうの。あなたが普段意識していない心の奥底まで、ミスティの目は暴き出して、曝け出す。ヘラ、あなたはそういうものと向き合う覚悟があって?」


 見なくてもわかる。ミスティの気配が大きくなった。

 どうやら、この説得の方向はミスティの望む追い払い方だったようだ。

 私は畳みかけるようにヘラに語って聞かせる。

 

「私、ミスティに願って描いてもらった絵で手元にあるのは一点だけなの。あんな風に描かれてしまうのなら、もう少し用心したのだけれど。あんまりな出来だったから、今でも人の目につかないところに飾るしかなくて……」


 はぁ、とため息をつく。

 寝巻姿じゃなければ、もう少し他の人に見せられるところに飾れたかもしれない。

 本当は背中を描かれた素描もあるが、あれはもっと人目にさらすわけにはいかない。そうだ、誕生日の絵だって、描いてくれたはずなのに私の手元にはない。

 

「本当はもう一点描いてあるはずなんだけれど、ミスティが私に見せるのをためらうくらいの有様なのよ。ヘラはどんな作品が出来上がっても、それが自分だと受け入れられる?」

 

 私が困ったわと両手を開いて見せれば、ヘラは顔色を変える。


「なんですって……」

「ヘラ、もうやめないか」


 ヘラがソファから腰を浮かしたところで、ダグラスが声をかける。


「もう席をはずして部屋へ戻っていなさい。君は姫様に対してたくさんの間違いを犯している」

「どうしてよ! ダグラスはいつも姫様の味方ね。姫様と私、フォレー領にとって必要なのはどちらなのか考えて欲しいわ」


 ユーノが立ち上がって、ヘラの腕をとる。


「ヘラ、もういい加減にして! 私も一緒に部屋に戻ってあげるから、これ以上フォレー家に泥を塗るようなことは止めて頂戴。お屋敷に留まるのが嫌なら、家まで送って行ってあげるわ」


 今度はユーノにむかっていらいらと声を荒らげる。


「なによ、貧乏な土着の娘がフォレー領の何に貢献できるっていうの? 体で夫人の座が射止められると思ったら、大間違いなんだから!」


 なんだか大ごとになってきた。

 

 険悪な雰囲気の中、私は安全基地を求めるようにミスティを近くに呼び寄せる。


「あ、ええと……ちょっと、あなたたち?」


 ユーノは泣きそうな顔をして、ヘラの頭を押して自分も身をかがめる。


「クララベル様、大変失礼いたしました。どうかお許しください。ヘラ、もう行くのよ」

「小間使いみたいなあんたが、私に指図しないで」


 ヘラはそうされても勢いを失わない。


「クララベル様、少し失礼いたします」


 ダグラスとユーノに引きずられるようにしてヘラが退室していくのを、私はミスティの袖につかまりながら見送った。


「なに? 私、何かした?」


 ミスティは難しい顔をしていたが、表情をゆるめると「何も」と言って私の額にかすめるようにキスをした。

 

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