第8話 篤志の出張

パタン



志穂が起きないように

静かに車のドアを閉める。


「ゴメンなさい。

出張間に合う?」

穂乃香は心配そうに篤志を見るが


「心配無いよ!

大丈夫、俺は1時間前から準備

しないと気が済まないタチだから

早めの時間に出るんだよね

だから、時間はあるよ。

今度の新幹線で大丈夫‼余裕余裕」


篤志はやさしい。


穂乃香は見るからにホッとした

表情をみせた。



空港へ行く時間と飛行機の

キャンセル待ちを考えたら

新幹線の方が早いかもしれない。

遅れたら先方に誠心誠意あやまろう。


穂乃香のマンションの前に着くと

篤志は白長いボックスカーを

止めた。

志穂と穂乃香を下ろすと心配そうに

言った。



「大丈夫?俺は明後日まで

帰れないけど・・・

何かあった直ぐに警察に電話して。」


穂乃香は車を降りて篤志を見る。


「うん。」


「じゃあ、行くね‼🚘⸒」


「うん、気を付けてね~‼」


発進した篤志の車はブウ━━━ン

と走り出した・・・が

バックでまたブウ━━━━ン

と帰って来て


「必ず朝、ひる、夜、連絡して」

そう言って穂乃香が頷くと

又車を走らせた。


バイバーイ

穂乃香も車が見えなくなるまで

手を振った。



仕事真面目な篤志

こんな事で信用を無くさせる

訳には行かない。

穂乃香は伯父の愛羅勝己に

電話をして篤志が遅れた理由を

話た。


そう穂乃香の伯父は

愛羅ホールディングス

の社長で祖父は会長をしている。

もうすぐ伯母に会長席を譲ると言う。

伯父は社長でいる方が好きらしい。

父親はそんな組織じみた所を嫌がり

市の職員を選んだ。


陽仁の出世が早かったのも

伯父が手をまわしていた。

穂乃香と結婚していたから社長の

親戚と言うのも嘘じゃない‼


じっくり育て上げ色々な役職を

回し経験を積ませ後を継がせる

つもりで・・・

しかし陽仁の素行の悪さが

露見した今、後を継がせるか

悩んでいた頃、穂乃香と陽仁は

離婚した。



穂乃香への行ないの悪さに

怒りを抑えられなかった伯父は

陽仁をクビにしたかったが

降格でガマンした。


そんな事情は陽仁も、穂乃香も

知らなかった。


陽仁も、穂乃香の父親の実家が

まさか

陽仁の務める会社の会長とは

話していない。

篤志にも話さない。


穂乃香には関係ない事と

気にしていなかった。

親戚だからどうのと言う訳もない‼

その事実も

おいおい話そうと思ってはいた。


陽仁の出世の速さも

人事に関わった誰かから漏れた

話が噂になって広がったんだろう。

しかし幸いにも陽仁は自分の実力と

思ってそんな噂は笑い飛ばしていた。


なんせ穂乃香の父親は役所務め

だったと聞いている。

噂おりのそんな家柄なら穂乃香は

お嬢様のハズ

節約家で、無駄にお金を使わない

穂乃香がそんなはずない!


しかも結婚式もしていない。

唯一肉親の伯父さんと穂乃香の

祖父にも合っていない。

両家の挨拶などしないで

婚姻届を出した。


穂乃香の両親は他界している。

陽仁は噂を打ち消し笑いとばした。





篤志はそんな陽仁にせまられていた穂乃香を出張より心配して来てくれた、

知らん顔は出来ない。

伯父に篤志が遅れる理由を報告した。



「おおう、そうか、そうか‼」

伯父は嬉しそうに呟いて


「わかった、心配はいらん」

そう言って伯父は、

ご機嫌に電話を切った。



テーブルにスマホを載せ

篤志からの連絡を待っ。

ピコーンバッ

穂乃香は直ぐライ〇を開く

「今着いたよ。」


穂乃香も連絡を返す。


「遅刻しなかった?」


篤志は穂乃香が心配してくれたのを

嬉しがりテンション⤴︎もアゲアゲ

「大丈夫って言ったじゃん(笑)

今から社入りするワ

じゃあ、夕方まで電話出れないよ!

大丈夫?」



「うんありがとう。」


「じゃあね」



「う、うんあの、篤志」


「何?どうした?どうした?」


「今日は、ありがとう。」



「・・・💓お、おう。

気にしないで・・じゃあ」


「うん。」


この出張が終わったら篤志は

穂乃香に話したいことがあった。

それは未だ先と思っていたが

今日の様な事もある

成る可く急ぎたい。



夜八時、志穂の寝ぐぜりの始まる

時間に篤志は電話を掛けてきた。

思った通り穂乃香は1人で

てんやわんや!




「篤志、中々泣き止まない」


「穂乃香落ち着いて、良いか

携帯をスピーカーにして志穂と

横になって、灯りは消して


準備出来た!?」


「うんどうしたらいい?」


「背中を優しく撫でるんだ」


「うん。」


すると携帯から篤志の歌声が流れ

て来た!

いつもの様にあのデ〇〇ニーの

優しいメロディ


あのダンスのシーンを思わせる

ように優しく流れる


あんなにギャン泣きしていた志穂は

篤志の歌に耳を傾けるように

目を瞑りいつしか眠ってしまった。


「ありがとう篤志寝た寝たー」


「そう良かった。

後はいつもの様にクラッシックを

低い音で流せば朝まで寝るよ

志穂はフフフ(∪。∪)。zzz」



「本当に篤志を志穂は好きね!」



「・・・俺は穂乃香にも

好きになって欲しい。」



「・・・・・うん。」



「へ?‼あ、あ、いやいやいや

良い人とか、優しいからとか、

じゃなくて・・・💦その・・・

あのぉーつまり」


「うん。」



「け、け、け、け、け、結

いやいやいや先ずは

彼氏として・・・

いや電話でする話とは違うな

帰ってから話そ‼ゞ」


「うん。」


篤志が何を言いたいのか

穂乃香には良く分かっていた。


そして穂乃香の気持ちも

固まった。

篤志とは普通の恋人がする様な

付き合いじやない。


まだ一線は越えていない。



そして出張も終わり、篤志が

今日帰ってくる。

何故か穂乃香はソワソワ


「一度会社に行って、それから

帰るから19時かな?」


「わかった気を付けて帰って

来てね。」


子供がいるから手の混んだものは

中々つくれない。

今夜の夕食はカレー🍛🥄””

と葉っぱをちぎっただけのサラダ🥗


テーブルの真ん中にドレッシング

テレビを見ながら篤志を待った。

すると篤志から電話が鳴った


「ゴメン穂乃香

今日、契約上手く行ったから

部所の皆で飲み会になった

出来るだけ早く帰るよ。」



「え━━━━嘘

ご飯作っちゃった!」


「あ・・マジ

本当にゴメン‼」


「・・・ಠ_ಠ💢遅くなるなら

自分のマンションにそのまま

帰ったら、志穂寝てるから

💢ムスッ」

穂乃香は急に不機嫌ポイ


「は?・・・何で?╬▔^▔」

篤志も語尾に力が入る。



「・・・もう大丈夫だから‼

今日はご飯食べたら寝ちゃうし

´💢ぷい」


つっけんどんな言い方に篤志も

「o`ω´o💢💢ムゥゥ

アッ、ソウ‼

じゃあ俺、今日は行かない‼」



「もう大丈夫だから、来なくて

いいよ‼

お仕事‼ ゴック、ロウ━━━サン〃」



「そうかそうか‼

穂乃香から来るなって言ったし

謝るまで行かね━━━━から‼」



「ハイハイ、ど━━━━せ

本当の父親じゃ無いし・・アッ🙊 ‼」



ガ━ゞゞゞゞ━━━━━━━ン

ズガビ━━Σ(●д●)━━━ン!!



🍃・・・







「ゴ、ゴメン‼」


「(( ̄▽ ̄;;)ア、ハハハハ…

ソレ言われたら、何にも言えね!」


ブチッと切れた電話は繋がら

無かった。


頭に来た篤志がブロックしたと

思う。


「は?(笑)」

ブロック?そこ迄やるか?


その夜から志穂のギャン泣きで

穂乃香は寝不足


篤志からの電話は来なかった。

一晩中眠れない日が続き

昼、志穂はグッスリと眠り昼と

夜が逆転してしまった。



最悪‼



穂乃香の体はフラフラ

昼は多少眠れるものの

寝返りを打ち出した志穂を

放ったらかしには出来ない。


篤志のありがたさが身に染みる

しかし穂乃香はあの日

篤志からプロポーズされるのでは

と淡い期待があった。


ずっと┣¨‡┣¨‡

カレーだってジャガイモ

剥き終わってからの~

授乳


肉切り終わってからのぉ~

ギャン泣き


時間をかけてから作ったのに

それを簡単にキャンセル?

ムカつきました。


いよいよ本当の恋人になれると

決心していたのに、

肩透かしをくらって・・

惨め!



篤志が居なくてもお構い無しに

志穂は泣きまくる。


今までは篤志が見てくれていたから

夜のうちに仕込みをして

洗濯して干して・・・

なのにあんな思っても居ない事

言ってしまった。



志穂にとっても篤志以外

父親は居ないと穂乃香は

思っていたし


信頼し尊敬し優しい彼を

穂乃香も大好きになっていた。


しかし

でも


彼を手放すのは彼の為に・・・

いいチャンスじゃないか

とか考えてしまう。


私はバツイチ、シングルマザー

頭の隅でずっと思っていた。

彼はまだ25歳

穂乃香には引け目もあった!

篤志の子では無い志穂を

押し付ける事になるんでは

無いだろうか?


28になったバツイチ女を

好き好んで嫁にする必要はないん

じゃないか?


篤志の両親だって

きっと望まない!

志穂と私を受け入れてくれるの

だろうか?


志穂と穂乃香自身の為なら

回りの人の事を考え無いのなら

篤志に平謝りして許してと

縋り着けば済むことだ。


でも


彼の責任感と優しさに漬け込んで

しまうのはやっぱり私ズルイ‼

ずっと彼が生物学的に父親じゃ

無い事は仕方が無くどうしょうも

ない事。


だからって篤志に私達の人生を

全部背負わせる?

穂乃香は色々考えてしまう。



篤志を自由にしてあげたが

いいんじゃないか?

常に頭にある疑問!!



「は?離婚した?」


「え、エヘ、はい、まあ、」


同じ銀行に勤めていた由美子先輩は

育休を得て今月から復帰したらしい。



「だから‼

あん時別れてたら良かったのよ‼

あの浮気野郎と!!


ん?でも別れてたら

志穂ちゃんには

会えて無かったか‼」



「そうですよ、勇人も別れた事

陽仁さんから聞いてきたみたいで

私には黙ってたんですから

ムカつきましたよ

まあ、結果オーライですね。

あんなクズ」


親友茉奈もイラつきながら

話して来る。

穂乃香を通して2人も仲良く

なっていた。

2人は志穂のお祝いをしに

久しぶりにやってきた。。


「これ少ないけど

御祝い」


2人はそれぞれ派手な祝い封筒を

テーブルに差し出した。

由美子先輩と茉奈はでかい紙袋を

見せて


「これ、お下がり、3人で

回そう。

又私達が産めば又まわして

子供って直ぐ大きくなるから」



「うわぁー助かる!」

お下がりいっぱいもらったけど

小さいサイズ無かったの嬉しい。


そうニッコリしながら言った。

穂乃香は2人にミルクティーを

出して篤志の事を相談した。

あれから3ヶ月が過ぎていた。



「・・・やるじゃん。」

茉奈は興味津々で食いついてくる

由美子先輩も


「なるほどあの唐変木とは

えらい違いじゃない‼」


「イクメンって大事よね!」


「ウンウン勇人だって最初は

いや~な顔してたんだよ💩みて

まあ、アンタの子よ、で無理やり

やらせ続けたら上手くなるもんだよ。


でも自分の子供じゃないのに

よっぽど穂乃香がすきなんだねぇ~」


「あはは、成程成程‼」

2人は篤志を肴にショートケーキ

をパクつく。




「穂乃香、やっぱり謝りなよ

一応謝らないと駄目‼」

由美子先輩はハッキリした人だから

うだうだ迷っている穂乃香の

背中をおしてくれた。



「うん、明日伯母さんに

志穂を預けて会って謝ってみる。」


2人はニコニコしながら

頷いた。


それから茉奈と由美子先輩は

2人で台所に立ち

4〜5日分の作り置きを作って

帰って行った。



2人は穂乃香より先にママに

なった、穂乃香の困っている

事を先回りしてくれる

頭の下がるばかりだ。



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