6日目

 雨にさらされている校門の前に、二つの影があった。一人は紫乃さんで、リュックを背負っている方が高耶だろう。楽しそうな話し声は聞こえるが、二人の距離は傘がぶつかる心配が全くないほど離れている。

「二人とも、早いね」

 とは言うが、俺も三十分も早く来ていた。この二人はどれだけ早くきていたのだろう。

「おい、遅かったじゃねえか。 咲太。な!」

 昨日も様子がおかしいと思っていたが、今日はよりおかしい。無理やりしゃべっているように見えるし、挙動も不審だ。

「なにが、な! だよ。これでも到着時間より三十分も早くきてるじゃんか」

「ねえ曽根くん。なんか今日の青柳くん変なんだよね」

 紫乃さんも、高耶のおかしさに気がついているようだ。俺は紫乃さんの方に向き直る。何気なく挨拶をしようとしたのだが、顔を見た途端に、高耶の挙動不審の理由がわかった気がする。

「なに? 眼鏡なら青柳くんが外したほうがいいって言ったんだよ」

 そこに立っているは紫乃愛聖、らしいのだが、もう誰なのか判断することはできない。別人のように可愛かった。

 薄手の少し青みがかったブラウスは、全体が余裕のある作りで、冷たそうな素材を使っていた。それに白いスキニーのパンツを履いている。

 なにより、眼鏡を外した紫乃さんの瞳は、目を離せなくなってしまう吸引力があった。

「すこし、睫毛とか弄ってるの。時間があればこれくらいのことはやるよ?」

 俺がジロジロと見ているのがバレたらしい。紫乃さんに化粧の解説をさせてしまった。

「学校にはしてこないよね?」

「勿論。あんま目立つようなことはしたくないしね。あと、普段はそんなことする余裕もないし」

 そう言いながら、上目遣いで俺を見てくる。多分、わざとだろう。

「俺には効かないよ」

「別に、そう言うつもりじゃないし」

「それ、高耶にやってみたら?」

 そう言うと、紫乃さんは苦々しく笑った。

「え、恥ずかしいからヤダ」

 高耶はすでにどこかに歩いてしまっている。こっちを振り向いて一言、

「急げ急げ。遊んでる場合じゃないぞ」

 と、耳が痛くなるほどの大きな声で言っている。こうして、予定時間を三十分早く、俺たちは星探しに出かけた。

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