第40話 Hey, ストリートメッシュガール
ついに、音ゲーの覇者が決まる日が来た。
思えばここまで、長い道のりだったよな。
今こそ練習の成果をみせるとき!
ま、俺昨日始めたばっかの初心者だけど。
「ねえねえ、兄さん。サングラスなんてかけてて大丈夫?」
選手控室で出番を待っていると、ストリート系のファッションをした女性に声を掛けられた。
髪を高い位置で横に束ねていて、一本入った紫色のメッシュがおしゃれだ。化粧は濃くないのに、派手なファッションが浮ついていないのは顔が整っているからだろうか。
「大丈夫だ、問題ない」
「セルフハンディキャップってやつ? やめといたほうがいいよー。負け犬の遠吠えなんてみじめだからさ」
「ん?」
いや、俺がサングラス着けてるのは前にテレビで『ダンジョンから降り立った未確認生物!?』みたいな報道を受けたからだ。
別に「あー、譜面見えねえわー。まじつれーわー」ってやりたいわけではない。
「知らないわけじゃないでしょ? 今日は2曲の合計スコアで戦うの。その2曲目は完全新曲! 譜面も公開されていないから動体視力も求められるの」
「……あー、そういうことか」
「わかった? わかったらおとなしく――」
「あ、いや、こっちの話」
だから昨日のギャラリー、あんなに盛り上がっていたのか。
大会では新曲が競技楽曲になる。
譜面は公開されていない。
つまり、初見楽曲に強いプレイヤーが有利。
そういうことだろ?
「選手の皆様、準備ができましたのでご入場ください!」
ちょうどその時、実行委員らしき人がやってきて呼出が行われた。
変わらずサングラスをつけていこうとする俺に、さっきの少女は再び声をかける。
「ちょっと、話聞いてた? サングラスなんてつけるだけ損なんだって!」
「お嬢ちゃん、優しいんだな」
「うんうん、そうでしょそうでしょー……じゃなくて」
「ま、問題ない」
どうせ俺は、ゾーンを使うから。
「サングラスはハンデじゃないってこと、結果で語ってやるよ」
*
『さあ始まりました!
結構な人数がいた。
どうやら俺たちがいた控室のほかにも控室はあったらしい。それにしても50人もいるのか。
『50人のプレイヤーはそれぞれ10人1組のグループに分けられ、各グループ最高得点を出したプレイヤーだけが決勝戦に進めるぜ!』
なるほど。
1曲目、2曲目ってのはこれのことか。
『気になる第1グループのメンバーと競技楽曲は、これだぁ!!』
会場の大きなモニターの上下に、各5人ずつ計10人のプレイヤーが表示されて、中央の帯に演奏楽曲が表示される。
楽曲難易度は34。
『
『前回チャンピオンの実力を見せつけてやれ!!』
と、俺の耳は観客の中からそんな声を拾った。
ほうほう、リュウカってのが前回チャンピオンなのか。
いったいどの人かなー。
「わー! みんなありがとう! 絶対勝つから、応援しててよね!!」
ん?
なんでこのメッシュガールが手を振ってんだ?
まあいいや。
ディスプレイに表示された参加者からリュウカってやつを探せば――
ん?
「にひひ、驚いた? そういうわけだからさ、前回チャンピオンのアドバイスは素直に聞いといたほうがいいよ?」
少女はしてやったりといった様子でしたり顔を浮かべた。
『決まったァァァ!! 第1グループの頂点に立ったのは
勝者は圧倒的な余裕を見せつけて舞い降りた。
フルコンボした選手は結構いたんだけど、彼女のようにすべてのノーツをベストタイミングで叩けた人はいなかった。
「どう? 話を聞く気になった?」
「おー、すごかったわ」
ゾーン使ってないのもあるけど、腕の動きが人間じゃねえや。
アンドロイドかサイボーグなんじゃないだろうか。
「ふふん、でしょう? 今からでもサングラスを外して――」
「あ、それはまた別」
顔が割れたらどんな騒ぎになるかわかったもんじゃないからな。
「ちょっと! 人が親切に――」
「まあ見てなって」
圧倒的な実力差を前に、多少の視界制限はハンデたりえないんだって証明して見せるからさ。
『さあ! 続いて第2グループのメンバーと競技楽曲は、これだぁ!!』
ディスプレイに表示された10名のプレイヤー。
その中には、俺の名前があった。
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