スカーレット・モンク(2)

「あのさ……釜山プサンの研究所に転勤しない? 何か有るたびに、どっちがか、もう片方かたっぽの研究所に出張って面倒じゃない?」

「あたしのカミさんが、韓国は冬が寒いから嫌だって」

「いや、あんたのカミさんの故郷さと、台湾は台湾でも標高二千m以上の山ん中じゃなかったけ? 冬になると普通に雪降る場所だろ」

「カミさんが台南で仕事やってんの。あたしが転勤になったら、離婚か単身赴任か、カミさんがもうすぐ管理職になれるのに仕事を辞めるかしか無いの」

「じゃあ、私が転勤するか……」

 そう話しているのは、2人の女性。1人は四十前後、もう1人は、あたしの師匠達と同じ位の齢。

 2人とも、あるモノをここに届ける為に、そして、動作の最終確認の為に、ここ来ていた。

 齢上の方は、韓国の釜山の「工房」に所属しているコードネーム「港のカフェの店長」。

 もう1人は、台湾の台南の「工房」に所属しているコードネーム「ミカエル」。

「何か有った時の為に重要人物は別々の場所に居た方がいいだろ」

 2人を手伝っているらん師匠がそう言った。

「あのさ……九州有数を通り越して、日本有数のチートチームのヤツが、そんな事言う?」

「やっぱり、チーム分けた方がいいかなぁ……?」

「まぁね……万が一の事が有ったら、超エース級の『ヒーロー』が一気に何人も居なくなりかねない。拠点だけでも分けた方がいいよ」

 3人は、私ともう1人の新人に「鎧」を着装させていた。

 もう1人の新人は……何年か前に瀾師匠の養子になった事以外は良く知らない、あたしより更に年下の女の子。

 2つの意味で「人形のような」と呼びたくなる女の子だ。

 1つは……齢の割に「かわいい」と云うより「美人」と呼びたくなる感じの顔立ちである事。

 もう1つは……おそろしくクソ真面目そうな感じの表情なせい。……いや……「かわいい」と云うより「美人」と呼びたくなる感じなのも、ず〜と、クソ真面目そうで感情が読めない表情のせいで、大人びて見えるからかも知れない。

 あたしの「鎧」は、民生用パワードスーツ「水城みずき災害救助レスキュー仕様モデル」の改造機。装甲は真紅に塗装されている。

 もう1人の女の子が着ているのは……伝説の「鎧」だ……。

 銀色に輝くそれは……瀾師匠が現役だった頃に使っていた「護国軍鬼・4号鬼」の改良機だ……。

 いや、正確には、「護国軍鬼・4号鬼」は瀾師匠が引退する切っ掛けになった戦いで中破し……これは、外見が似てて、量産困難な部品が一部流用されてる以外は、別物だ。装甲は新調。センサや人工筋肉や制御用コンピューターも最新のモノ。制御用コンピューターに乗ってるAIも最新版らしい。

「よし……『スカーレット・モンク』、動作テスト開始だ」

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