第6話 緊張の謁見
用意された部屋はひとりでは持て余してしまうほどの広い部屋である。
高価そうな調度品が並べられ、ベッドは天蓋付きである。
部屋の中央付近にはフカフカとしたソファーと机も設置されていた。
ひとまず、明日の午前中までは特にやることが無い。
「明日まではのんびりさせてもらうことにしましょう」
慣れない長時間の馬車移動で無意識下に少なからずの疲労も蓄積されていた。
私は、靴を脱ぐとベッドに寝転がる。
ぼんやりと天井を眺めていると、意識を手放した。
「寝てしまった見たですね」
体感的には3時間ほど眠ていただろうか。
目を擦りながらも、私は体を起こした。
バルコニーに出ると冷たい夕方の風が前髪を持ち上げた。
眠気を覚ますにはちょうどいいかもしれない。
「サクラ様、ご夕食をお持ちしました」
王宮の従者が私の夕食を準備して部屋まで持ってきてくれた。
「ありがとう。そこにおいておいてくれるかしら」
「かしこまりました」
そう言って、従者の手によって夕食が机の上に置かれた。
私は、しばらく風に当たってから部屋の中に戻った。
机の上には今日の夕食であるサンドイッチと紅茶が置かれていた。
これは私がリクエストしたものであった。
今日はそこまでがっつりとは食べたい気分ではなかったのだ。
私はサンドイッチをつまみながら紅茶を口に含んでいった。
シンプルなものだが、とても美味しい。
紅茶もいい茶葉を使っているのだろう。
全て食べ終わった頃には夜も更けてきた。
「まだそんなに眠く無いですわね」
先ほど少し寝ていたからか、眠気は襲って来なかった。
私はソファーに座って残っている紅茶を口に含む。
たまにはこうして何も考えずにのんびりと過ごすのも悪くはない。
宮廷魔術師になれば忙しい毎日が幕を開けることであろう。
そんな過ごし方をしていると時刻は深夜になってしまった。
「流石に寝ないと明日にひびきそうですね」
夜更かしが過ぎるのもお肌にも良くない。
私は再びベッドに入った。
♢
翌朝、8時頃に王宮の従者が私を起こしてくれた。
「サクラ様、おはようございます」
「おはよう」
私は眠い目をぼんやりと開けながら体を起こした。
そこからというもの、メイドによって髪の毛を整えられ、綺麗にメイクをする。
ここまでにかかった時間は約1時間。
そして、白いフリルの付いたドレスを着せられた。
昨日の姿からは見違えるほどに美しくなったと自分でも思ってしまう。
「これで準備は終了です。謁見の間へと参りましょう」
「ありがとうございます」
時刻は10時の30分ほど前であった。
メイドに案内されて謁見の間へと向かう。
そこから、謁見と任命についての軽い打ち合わせをした。
「謁見の方は大丈夫そうですか?」
昨日、私を出迎えてくれた執事のパウルが優しい声で言った。
「緊張していますが、多分大丈夫そうです」
何しろ国王陛下と謁見するのはこれが初めてなのだ。
少なからずの緊張は覚える。
「陛下は多少のミスを気にするようなお方ではないので、肩の力を抜いてくださいね」
「分かりました」
そして、いよいよ国王陛下との謁見の時間がやってきた。
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