戦争と戦場と兵士と
曇空 鈍縒
武器の重要性
始まり
遠くで悲鳴が聞こえた。
何かが焦げたようなにおいがする。
そして、土のにおいがする。植物の、生命のにおいはしない。ここは戦争が原因で、荒廃しきった地面がむき出しになってるから当然だが。
僕は、倒れたまま空を見上げた。
青空だ。周囲に漂う煙がなければ、きっと人生最後で、なおかつ快晴の青空が見えただろう。
僕を吹き飛ばし片足をつぶした兵器。これは僕の知っている兵器ではない。
これだけの威力がある兵器と言えばバリスタ(大型の石弓に似たもの)とカタパルトがあるが、敵陣にそれらを実現させるような巨大な兵器はない。
敵の塹壕に火を噴く長さ150センチぐらいの鉄の筒があるのが気になるが、そんな威力があるとは思えない。だが、あれぐらいしか敵には兵器がない。
同じく火を噴く棒を持った敵兵が近づいてくる。彼らの棒が火を噴くと、仲間が突然けがをしたり、死ぬ。おそらく特殊な飛び道具なんだろう。
この足で逃げるのは無理だ。これは死んだな。
「そうだな。今ここに俺がいるからな。しかも足が吹っ飛んでいる」
逆光で顔はよく見えないが、誰かが、僕の思考に返事をした。身に着けた丈夫な布で作られた簡素な鎧が、手になじんだ剣が、とても重く感じる。
「お前は誰だ?」
僕は、思わず聞いた。自分を殺すものの名前程度は、覚えておきたい。
「そこら辺にいるただの兵士だ」
そんなことは分かっている。俺は名前を聞いたんだ。だが、彼に答える気はなさそうだ。
「その武器は何というんだ?」
彼の名前を聞くのはあきらめた。その代わりに、もう一つ気になっていたことを聞いた。知ったところで死にゆくものに意味などないが。
「鉄砲って言うんだ。銃ともいうけどな」
面白い名前の武器だな。こんな状況だけどなぜか笑みがこぼれた。
「じゃあな。俺も忙しいんだ」
そう言って彼は引き金を引いた。
彼の脳は吹き飛び、彼の剣技は永遠に失われた。
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