生きてる化石

私とツバキさんはオウムガイの水槽を見ていた。

オウムガイは殻に入った頭足類の仲間で南太平洋からオーストラリア近海に生息し、水深およそ100メートルから600メートルに棲む。

イカやタコと同じく漏斗とよばれる器官から噴き出す水を推進力にして体を軽く揺すりながらゆっくりと運動する。ノーチラスとはギリシャ語で水夫、船乗りを意味する。

「癒されますね」

私は水槽の中を泳ぐオウムガイ達をまじまじと見る。

「ユイコちゃんは珍しい生き物好きだっけ?」

ツバキさんが私に聞く。

「はい。ハワイモンクアザラシとか好きです」

私はスマホのカメラでオウムガイの写真を撮る。

オウムガイはやはり癒される。

「スマホの写真、ツバキさんにも現像して送りますね」

私の言葉にツバキさんが表情を緩める。

「ありがとう。今度のデートで俺のスマホのアイコン画像にするよ」

私は何故か嬉しかった。ずっとこんな幸せな時間が続けばいいのに。


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