第23話 茶話坐忘機

ボスは伸びをしながら言った。

「あー、昨日は楽しかったのー。」


「楽しかったのー。ソウちゃんー。」

猟師さんも伸びをすると、2人僕の方を見た。


何か聞いて欲しそうな目だ。

「昨日、何かあったんですか?」

まんまと引っかかった。


それから長時間、昨日行ったキャバクラの話を永遠と聞かされた。


僕は白目をむきながら適当な相槌をうった。

いろんな意味で揺さぶられている。


惑わされまいと心のスイッチをONにした。

「そんな事よりボス!デザイン完成しました!」

僕は切り込んだ。


「そうかい。ちょいと見せてみい。」


「準備します」


僕はそう言うと昨日揮毫きごうした書を庭の木に紐で括り付けた。

「茶話坐忘機」《さわそぞろにきをわする》


庭には侘助が咲いている。

ちょうどいい。


服紗ふくさを腰に付け、BBQコンロに鉄瓶を置く。

編曲を済ませたCDをデッキに入れ再生ボタンを押す。


鯉の滝登りが描かれたなつめ


織部の器。


そしてボスと猟師さん。


僕は心を込めて茶筅ちゃせんをふった。

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