第9話 fight

気がつくと僕はセコンドに担がれていた。


「負けた?」


左ハイキックをくらいリングで気を失ったらしい。


「終わった、、」


そう感じるまでは時間がかかった。


控室で相手選手と挨拶をする。

「ありがとうございました」


清々しい気持ち。


負けたのか。


しばらく休むといろんな思いが込み上げた。


トイレに行き、1人泣き崩れた。


思い返せば強さを求め格闘技を始め、いろんな事を学んだ。

対戦相手、練習仲間の大切さ。

戦った後の爽快さ。

心のコントロール。

景色の見え方の違い。

食べものの美味しさ。

トロフィーの重み、言い出したらキリがない。

「努力した分、結果がついてくるなんてウソだ!」とひねくれた日。


キツくて何度もやめたいと思った。


だけど何より人に優しくなれた。


家に帰ると全身が痛みだす。

ソファーに横になりながら自分で自分に言った。

「もうじゅうぶんがんばったよ」


今まで何度も試合をしてきたけど、こんな気持ちは初めてだった。


「格闘技をやめよう」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る