4話 冒険者登録

 朝になった。


「うーん、よく寝た! 爽やかな朝だな!」


 俺はそうつぶやく。

 何か悪夢を見た気もするが、よく思い出せない。

 きっと気のせいだな!


 気のせいといえば、この部屋の空気がどことなくキレイになっている気がする。

 さらに、何やら肩の荷が下りたような感覚もある。

 体が軽い。


「さあて。朝食を済ませたら、今日は冒険者ギルドに行ってみるか」


 冒険者は、魔物の討伐や薬草の採取、それに隊商や要人の護衛などを行う者のことである。

 冒険者ギルドという国をまたいだ組織によって管理されている。


 開花しないテイムの才能を補うために、俺はそれなりに武芸の鍛錬を積んできた。

 少なくとも最初級の冒険者としてならやっていけるはずだ。


「お客さん。冒険者になるの?」


「ん?」


 俺に声を掛けてきたのは、この宿屋の娘だ。

 昨日、俺を部屋まで案内してくれた。


「そうだな。俺は冒険者になるつもりだ。遠くの街から来て、まだ働き口のあてがないからな」


 俺はそう答える。

 生きていくだけなら、飯屋の皿洗いだとか、街の清掃業などもあるが……。

 やはり、いずれは父上を見返したいという気持ちもある。

 そのためには、武功を上げるチャンスのある冒険者として活動していくのがいいだろう。


「そうなんだ。がんばってね。応援してるよー」


 少女がそう言う。

 宿屋側からすれば、宿泊客には安定して稼いでもらって、末長く泊まってほしいよな。

 まあ、彼女はそこまで深くは考えていないかもしれないが。

 彼女の応援に応えられるよう、がんばっていかないとな。



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 冒険者ギルドに着いた。

 中に入り、受付嬢に話しかける。


「すまない。冒険者として登録したいのだが……」


「承知しました。では、こちらの登録用紙にご記入ください」


 受付嬢が紙を差し出してくる。

 名前、職業、特技……。

 俺は一通り記入していく。


名前:アルフ

職業:剣士

特技:剣術(初級)、火魔法(初級)


 名前は本名のアルフと記載しておいた。

 伯爵家を追放された身ではあるが、家名さえ名乗らなければとやかくは言われないだろう。

 それなりによくある名前だし、偽名を使う必要はない。


 職業は、剣士だ。

 本来であれば、テイマーと書ければよかったのだが……。

 俺には、テイマーとしての才能がないのだ。


 特技は、剣術と火魔法。

 ただし、どちらも初級である。

 テイマーとしての才能がなかったため、せめて別の分野ではと必死にがんばってきたのだ。

 ゴブリンやスライム程度であれば、安定して討伐できる。


 俺は受付嬢に紙を渡す。


「ふむふむ……。お名前は、アルフさん。剣士で、初級の火魔法も使えるのですか。なかなか有望ですね」


 彼女がそう言う。

 冒険者は、要するに何でも屋である。

 上級にまで上り詰めればそれなりに稼げる。


 しかし、最初から強い者であれば、そもそも軍隊や騎士団に入ればいい。

 軍隊や騎士団ではなく冒険者に登録するような者は、大した戦闘能力を持っていないことがほとんどだ。

 そこから一部の者が才能を開花させて、上級冒険者として上り詰めていくのである。


「ああ。何とか、食っていけるようにがんばるつもりだ」


 俺はそう言う。

 最終目標は、武功を立てて父上を見返すことだ。

 しかし現状の目標は、とりあえず食い扶持を確保することである。


「アルフさんなら、きっとだいじょうぶですよ。(……この年で魔法を使える剣士? 結構イケメンだし、落ち着いているし……。これは個人的にも狙い目かも!)」


 受付嬢がそう言う。

 最後のほうに何やら小声でつぶやいていたようだが、よく聞き取れなかった。


「? 何か言ったか?」


「いいえ、何もないですよ。では、さっそく何か受注していかれますか? 薬草採取とか、低級の魔物退治とか」


 受付嬢がそう提案してくる。

 確かに、駆け出し冒険者であればそのあたりが定番である。

 俺がどの依頼を受注するか考えているときーー。


「おうおう、ガキがいっちょ前に冒険者気取りかよ!」


「ギャハハハハ! お家に帰ってママのおっぱいでも吸っているのがお似合いだぜ!」


 ガラの悪い声だ。

 チンピラ2人組から絡まれたようだ。

 さて、どうしたものか。

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