旅編2 オスカー様は他国でもモテる様です
どんどん小さくなっていくカルダス王国。それにしてもいい天気だ!
「アメリア、見てごらん。魚がいるよ。カモメも飛んでいる!そうだ、せっかくだから餌をやろう!」
そう言うと、近くにいた使用人に何か話をしている。しばらくすると、使用人がパンを持ってきた。
「はい、アメリアの分!こうやって投げるんだよ」
オスカー様がおもむろにパンをちぎると、そのままカモメに向かって投げた。すると、上手にキャッチするカモメ。凄いわ!私も早速パンをちぎって投げてみると、上手にキャッチして食べていた。
「オスカー様、凄いわ!カモメが上手にパンをキャッチして食べているわ」
カモメにパンをあげ、しばらく2人で海を見つめた後は昼食を食べた。食後は娯楽施設で思いっきり体を動かした後は、夕食を食べて各自部屋に戻る。
湯あみを済ませ、そろそろ寝ようと思った時、オスカー様が訪ねて来た。
「アメリア、少しいいかい?」
「ええ、もちろんです」
オスカー様に連れられて来たのは、デッキだ。デッキに備え付けられている椅子に2人で並んで座った。
「アメリア、見てごらん。星が物凄く奇麗だよ!こんなに奇麗な星、初めてみたよ」
どうやら、この星を見せたくて、私をデッキに連れて来てくれた様だ。
「本当に奇麗ですわね!まるで別の世界にいるみたいですわ」
ファビアナと一緒に商船に乗った時も、何度も奇麗な星空を見た。あの時も奇麗だったが、今回はまた格段に奇麗だ。やっぱり、オスカー様と一緒に見ているからかしら?
「オスカー様、私を船の旅に連れて来て下さり、ありがとうございます!まさに今、こうやって海の上で奇麗な星空をオスカー様と見ているだなんて、夢の様ですわ」
「僕こそ、こんなにも美しい世界がある事を教えてくれてありがとう。アメリアのおかげだよ。今まで散々傷つけて本当にごめん!さすがにギルバート殿下には敵わないかもしれないが、長期休みの間はこうやって旅に出て、色々な国を回ろうね」
そう言って、ギューッと私を抱きしめてくれたオスカー様。そんなオスカー様が愛おしくて、オスカー様の唇に自分の唇を重ねた。次第に深くなって行く。しばらくオスカー様を堪能した後は、どちらともなくゆっくり離れた。
その後も2人で話をしながら、夜遅くまで星空を眺め続けた。
翌日、早速1つ目の国に着いた様だ。北にある国の様で、少し寒い。上着を着て、2人で街に出た。ちなみに我がカルダス王国は、年中暑くもなく寒くもない快適な国なのだ。
ファビアナの商船に乗せてもらった時も、比較的暖かい国を回っていたので、寒い国は初めてだ。
オスカー様と一緒にゆっくり街を見て回る。比較的寒い国とあって、温かい食べ物が多く売られていた。あら?皆が食べているものはなにかしら?
「オスカー様、皆が何か食べていますわ。あれはなにかしら?」
つい気になってオスカー様に話しかけた。
「何だろうね。せっかくだから、僕達も食べてみようか。ちょっと待っていてね」
オスカー様が店員さんに話しかけている。どうやら食べ物の名前を聞いている様だ。そして、なぜか3つ持って帰って来た。
「アメリア、これはサツマイモというお芋を蒸し焼きにしたものらしい。甘くて美味しいらしいから、早速食べてみよう。そうそう、皮は剥いて食べるらしいよ」
サツマイモ?イモと付いているから、お芋の一種なのだろう。
「ありがとうございます。それより、どうして3つも持っているのですか?」
「それが…おまけで貰ったんだよ」
バツの悪そうな顔でそう言ったオスカー様。なるほど、オスカー様は誰もが認める超絶イケメンだ。きっとお店の人も、オスカー様の美しさにノックアウトされたのね。
本当に、罪深い顔ね!
気を取り直して、早速サツマイモと言う物を食べようと思ったのだが、熱くて中々皮がむけない。悪戦苦闘している私を見たオスカー様が、器用に皮をむいてくれた。
早速1口。うん、ホクホクの食感と甘みがよく合っている。それにしても、お芋なのに本当に甘いのね。でも物凄く美味しいわ!それに、体も温まるし。
サツマイモを食べ終わった後は、また街を散策する。せっかくなので色々と買い物をしながら回るのだが、なぜか行くお店行くお店でサービスを受けるオスカー様。
「お兄ちゃん、超絶イケメンだから、はいオマケ」
そう言ってオマケしてくれるのだ。挙句の果てには、なぜか女性陣から握手を求められていた。でも、しっかり断ってくれたオスカー様。“僕には大切な婚約者がいるから、他の女性には触れたくはないんだ”そう言ってくれたのだ!
その言葉を聞いた瞬間、心の奥が温かいもので包まれたような気がした。やっぱり、オスカー様は私の自慢の婚約者ね。
昼食はせっかくなので、この国の郷土料理が食べられるというお店に行く事にした。このお店の情報も、オスカー様を気に入った別のお店のおばさんが教えてくれたのだ。
お店に入ると、既に沢山の人で賑わっていた。早速案内された席に座る。このお店はお鍋という料理が有名との事で、それを2人で注文した。ちなみに私たちが頼んだ鍋は、トマト鍋だ。
しばらくすると、鍋が運ばれてきた。トマトで煮込んであるからか、真っ赤だ。このまま食べればいいのかしら?よくわからないが、早速取り分けて2人で食べた。
「オスカー様、このお鍋というお料理、とっても美味しいですわ!特にスープが美味しいです」
野菜やお肉のうまみがトマトのスープに溶け込んでいて、本当に美味しいのだ。
「ちょっとあなた、そんなにスープを飲んだら、最後のシメが食べられなくなるわよ」
そう言って話しかけて来たのは、隣に座っていた若い女性2人組だ。
「あら、いい男ね!」
そう言うと、なぜかオスカー様を挟むように座った女性たち。
明らかに不機嫌そうな顔のオスカー様。
「いい、鍋はね。まずは具材を食べるのよ。そして具材を食べた後はシメに、麺を入れたりお米を入れたりして食べるのがルールなの。トマト鍋だとシメはリゾットがお勧めよ。だから汁はある程度残しておいた方がいいの!」
女性が丁寧に教えてくれた。なるほど、そう言う風に食べるのね。初めて知ったわ。
「それより、どこから来たの?あなた、かなりのイケメンね。向かいの方は妹さん?」
はっ?誰が妹よ、失礼ね!それよりもオスカー様に気安く触らないで欲しいわ!そうよ、やっぱりここははっきりと言わないとね。そう思った時だった。
「親切に教えてくれてありがとう。彼女は僕の婚約者だよ。それよりこの国は、見ず知らずの男性にベタベタ触るのがルールなのかい?随分と緩い国なんだね」
大きな声で周りに聞こえる様にそう言ったオスカー様。他の客が一斉にこちらを振り向いた。
「いえ…別にそうではなくって…」
「そうそう、あら嫌だ、もうこんな時間ね。早く行かないと」
そう言うと、そそくさとお店から出て行った女性たち。一体何だったのかしら?
「やっとうるさいのが居なくなったね。さあ、ゆっくり食べよう」
そう言って私の隣の席にやって来たオスカー様。ピシッと断ってくれた事が嬉しくて、隣に来たオスカー様にギューッと抱き着いた。
その後は2人で食べさせ合いっこをしながら、最後のシメのリゾットまで美味しく頂いたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。