第699話 アメリカからの依頼

「ヨシノブ、少々困った事になった。」

ワシントン大統領から連絡が来る。

「どうしたジョー?」

ワシントンは魔力素材を中国が開発した事、そして大量生産に踏み出し、軍備の増強をはかっている事を伝えてきた。


「魔力素材ですか、アメリカは開発出来ていないのですか?」

「残念ながらな、我が国に術者がみつからないのだ、どうも西欧文明は古代から伝わる術を軽んじ過ぎたようだ。」

アメリカの歴史は新しい上に、先住民のインディオの迫害のせいで、術が伝わっていなかった、そして過去にあった魔女狩りも術式の伝承を途絶えさす結果となり、西欧諸国では術者を探すのに四苦八苦していた。


「それでどうしたら?」

「ヨシノブの所から輸入出来ないだろうか?」

「輸入ですか、こちらの鉱物が減るのは少し困るような・・・」

「それはわかっている、だから日本政府に自衛隊に鋼材を登録するようにさせる、それならば無尽蔵に取り出せるのだろう?」

「・・・たぶん?石油は出てますからね、大丈夫だと思います。」

「その鋼材に魔力を込めて輸出してくれないか?もちろん報酬は出す。」

「報酬ですか、金銭を貰っても使い道が・・・」

「わかっている、だがまずは金銭と・・・これだ!」

ワシントンはマラドーナのスパイクとユニフォームを見せる。


「これは!!」

「ヨシノブがサッカー好きと言うのは聞いている、どうだ喉から手が出るほど欲しいだろう。

そして、これだ。」

ワシントンはワールドカップ全試合のVIP席チケットを出す。


「おおぉぉぉ・・・よく用意出来ましたね。」

「これでもアメリカ大統領だからな、席を用意するぐらい簡単な事だ、どうだ欲しくないか?」

「欲しいです。」

「ならば、交渉成立でいいな、もちろん別途購入費は支払わせてもらう。」

「わかった、でも量とかは保証できないぞ、魔力を込める手間もあるしな。」

「なるべく多く欲しいところだが、無理の無い程度で構わない、私としても無理をさせるつもりは無いからな。」

俺とワシントンの交渉は成立する。


「宮木総理、自衛隊の登録に各種素材を追加してもらいたい。」

「また、ヨシノブにですか?今度は何を考えているのですか?」

ワシントン大統領の直接電話を受けた宮木はワシントンのひいてはアメリカの行動理由を知りたかった。


「これは安全保障上極めて重要な案件だ、宮木総理、私の顔を立てて受けてもらえないか?」

「ワシントン大統領、そう言われると断るすべがないですが、せめて理由ぐらい教えて貰っても?」

「日本の機密保持が脆弱なのでな、詳しく言えないのだ、宮木総理は先日の情報漏洩についてどう思っている?」

宮木は言葉に詰まる、国家機密にも相当する情報が隣国に漏れたのだ、証拠こそみつからないものの、政府関係者もしくは議員の誰かが漏らした事は確実だった。


「その件につきましては、誠に遺憾ながら、私どもの落ち度でありまして・・・」

「ならば、情報を渡さないのもわかるだろう。

なに、登録するだけなのだ、日本に損など発生しないだろ?」

「わかりました、各種素材を登録すればいいのですね。」

宮木はアメリカが提出してきた素材を自衛隊の備品として登録する。


こうして大規模な交易が開始される事になるのだった。

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