第689話 マックスとアナベル

屋敷の応接室に入るとカルラはマックスにお茶の用意をしている。


「・・・アナベル、なぜ此処にいる。」

マックスはアナベルを睨む。

「私はカルラ様の護衛にございますので。」

「ここはヨシノブの屋敷だ、護衛する必要などあるまい。」

「これはいなことを、お客人が参っているのに護衛も無しとはいきますまい。」

「客人だと。」

「はい、マックス様はお客人のはず、何か間違いがありましたか?」

アナベルがサラッと応える事にマックスはカルラとアナベルがまるで身内のように感じて不快に思う。


「くっ、無いが、俺がカルラさんに危害を加えるわけが無いだろう、護衛など必要ない。」

「何をおっしゃいます、令嬢たるカルラ様が男性と二人で会うなど危害を加える云々の話にございます。」

「アナベル!いい度胸だな。」

「私はカルラ様の身をお守りするだけにございます。」

マックスとアナベルは笑顔で睨み合っていた。


「マックスさま、アナベルさんどうかなさいましたか?」

カルラがお茶もってくる。


「いや、なんでもございません。ただアナベルが過保護に護衛をしすぎではないかと話していたところです。」

「そうなんですよ、街に買い物に行くのも一人で行かせてくれなくて。」

カルラが少しため息をつく。


「お一人でなど危ないではありませぬか。」

「危ないっていっても王都ですし、そんなに危ないところじゃ無いし。」

「危のうございます、カルラ様を狙い何処に変態もとい暴漢が現れるかわかったものではありません。」

アナベルはチラリとマックスを見る、その目は変態とはマックスをさすとでもいいたそうだった。


「アナベル、何が言いたい。」

「いえ、私は何も。

私はカルラ様の身をあんじているだけにございます。」

マックスとアナベルが睨み合う。


「私は大丈夫ですよ、戦場というわけでもありませんし、王都の方々も良くしてくれますし。」

王都の人間でカルラに危害を与えるとどうなるか、知らない者はいなくなっていた。

特に犯罪者の方が敏感でカルラの人相書きは出回っており、ヘタに手を出すとマックスが直々に一族郎党皆殺しにしに来ると有名にもなっていた。


「それでもです、何があるかわかりませんのでお一人で行動はなされないよう、お出かけになる際は私に声をかけていただければと。」

「アナベルさんに悪いですし・・・」

カルラは一々アナベルにお願いするのに気が引けていたのだが、それ以上に心を削られる者がいる。


「アナベル、お前まさか、カルラさんとデー、いやお出かけをしたのではないよな?」

マックスの表情は青い・・・

「護衛として出掛けた事はありますね。」


「表へ出ろ!お前の腕前を見てやる。」

「いいです、騎士団長の腕前見させていただきます。

ただ、私の腕もかなり上がっているとだけお伝えしましょう。」

「いいだろう!減らず口を叩けんようにしてやる。」

マックスはアナベルを連れて訓練所に向かっていく。


「あ、あのマックスさま?アナベルさん、何をするつもりなんですか?」

事態の急変に置いていかれたカルラは仕方なく二人について訓練所に向かうのだった。

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