第654話 後始末

殺されるということを聞かされた兵士だけでなく役人達は嘆いていた。

既に手足を縛られ抵抗出来ない。


泣き喚き、命乞いを、なおも叫ぶ・・・

「あきらめろ、マックス様がお怒りだからな、お前たちの死は変わらん。」

兵士はサラッと聞き流している。

兵士としては首を斬り落とす数が多いのが面倒なだけで、そもそもカルラを狙ったコイツラを生かす理由は無かった。


兵士の中には命令が下るのを今かと待ちわびている者もいた。


「命令が出た!処刑は取りやめだ!」

「な、なんだと!どういうことだ!」

処刑を待ち望む兵士は有り得ない命令変更に驚きを隠せない。

「カルラ様のお優しいお心だ、あの方は抵抗出来ぬ者の死を望まぬようだ。」

「そうだった、お優しいカルラ様ならそうおっしゃられる事もあったのか・・・

戦場で斬らなかった事が悔やまれる・・・」

兵士達は残念がる中。


「たすかった・・・助かったんだよな!」

捕まっていたもの達は徐々に現実味が出てきて、涙を流しだす。

「よかった!命がつながった。」

「家族にまた会えるんだ・・・」

歓喜の声が木霊する。


「よいか!お前達を助けたのはカルラ様だ!

あの方は自身の命を狙われたというのに復讐を考えない女神のような御方なのだ!

この事を深く感謝するといい!!」

兵士は歓喜する者達にカルラの優しさをつたえる。


「カルラ様・・・」

「申し訳ない、戦とはいえこのような優しい心の持ち主を狙うなんて・・・」

捕まっていた者達の脳裏にカルラの名前が刻まれた瞬間であった。


そんな中、マックスの命令を受けた一団は捕虜になった上、別区画に管理している者達の所に急ぐ。

「おお、これはランスロットさんでしたかな、日本政府に連絡はつきましたかな?」

マックスは降伏してきた者の中で日本の政治家を名乗った者達を隔離していた。

彼らは日本政府に連絡することを要求しており、優遇されて当然かのような振る舞いをしていた。


「日本政府に連絡はつけていないが、お前達の処遇は決まった。」

ランスロットを含めて兵士達は剣を抜く。


「なっ!マインズ王国は日本政府を蔑ろにするつもりですか!

これは重大な国際問題になりますぞ。」

「日本政府など我が国と国交の無い国が何を言う、そもそもお前達のことを誰が伝える?」

「えっ?」

「お前達はここで始末させてもらう。

日本の政治家の存在が邪魔なのでね。」

野党議員達を囲むように兵士が配備されており、逃げる道は無かった。


「な、何を言っている、私達を殺すつもりなのか・・・」

殺気に満ちた空気を感じたのか語尾が弱くなる。

「そういう事だ、お前達がいた事を知られなければ日本政府とやらが問題にしてくる事は無い。」

「待て!日本政府は無理でもヨシノブ!ヨシノブに連絡を取ってくれ!彼なら我々を保護してくれるはずだ!」

「ふっ、ヨシノブ様に会わせると都合が悪いと思う方がおられるのだ。

あきらめろ。

おい、やれ!」

「やめろ!!」

ランスロットの指示が出ると兵士は喜び勇んで斬っていく。

降伏してからの傲慢ぶりに兵士に鬱憤が溜まっていたのだ、ワザと手足を先に斬り、痛みを与えてから止めをさすものまでいた。


こうして飛ばされた野党議員は全滅するのだった・・・


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