第635話 アルバート
アルバートは追い詰められていた、弾も尽き、手持ちの武器はナイフぐらいになっている。
「そろそろしまいか?カルラは逃げれただろうな。」
アルバートは一人呟く。
野盗上がりのビチャの追撃は上手く、逃げ道の無い崖下に徐々に追い詰められていたのだ。
既に周りも囲まれ、逃げ道も無い。
多人数にナイフだけで立ち向かえるほど近接戦闘の強さは無い。
岩に腰掛け、囲んでいるビチャ達を眺める。
「よくもまあ、俺達にここまでやってくれたな、簡単に死ねると思うなよ。」
ビチャは仲間を殺られた事で怒り心頭だった。
アシタとしては生きて捕まえて交渉材料にするつもりだったのだが、ビチャは感情のままに血祭り上げるつもりであった。
「おいおい、こんな子供に何をキレてんだ?
俺一人にやられるなんてだらしない大人だな。」
アルバートはビチャを笑う。
どうせ死ぬにしても恥ずかしい死に方など出来ない、誇り高く散るのだ。
指揮官と思わしきビチャを挑発にして前に出るのを待っていた。
指揮官を道連れなら、最低限の尊厳は守れるか?
アルバートは最期の時が近づきつつも戦士であった・・・
「くくく、やすい挑発だな、殺気が漏れてるぞ。そうか俺の首が狙いか、残念だな、お前の相手などせんよ、おい弓を構えろ、狙いは両手両足だぞ、簡単に殺すなよ。
こいつには皮を剥ぎ、目をくり抜き、殺してくださいと泣きわめくまでいたぶり尽くすという運命が待ってるからな。」
ビチャは大きく笑う。
「ゲスが、俺がそんな真似するかよ。」
アルバートは手に持つナイフを強く握る。
まだ遠い、襲いかかっても届かない。
もう少し近ければ・・・
アルバートに悔しそうな表情が浮かぶ、どうやらビチャを道連れには出来ない。
それならば、最期に大暴れするしかない!
アルバートが駆け出す前に・・・
「アルバート動くな、コイツラは俺が始末する。」
アルバートの前にイゾウが立つ。
「イゾウさん?何故ここに?」
「ヨシノブから連絡があってな、子供のピンチだ、助けてくれと頼まれた。」
「えっ、なんでおとうさんが・・・いや、それより、俺の居場所がなぜ?」
「何かあった時に備えて、戦闘する子供達全てにマーカーをつけてある。
現在、居場所がわからなかったのはアルバートお前とフランツ、二人だった。」
「カルラは!カルラにはマーカーをつけてないんですか?」
「あの子は戦場にでんだろう?・・・違うのか?」
「現在進行系でピンチになっていると思います。」
「うぬぅ・・・抜かったわい、ならばコヤツラをしとめて早く探さねばならぬな。」
イゾウとアルバートはビチャ達を無視して話している。
「おいおい、誰か知らんがこの数を相手に勝てるとでも思っているのか?」
「有象無象がいくらおった所で結果は変わらん。」
「はぁ?馬鹿か、数はチカラだよ、そんな簡単な事もわから・・・」
ビチャは話している途中で顎から脳天に向けて刀が刺さっていた。
ビチャの身体は力なく倒れる。
「うるさい、時間が無い、くだらん口を開くな。」
イゾウは刀の一部を転移させ、ビチャの顎から脳天に向けて刀を移動させる、
それだけでビチャは命を落としたのだ。
「さて、時間が無いからな、全員死んでおけ。」イゾウは多数のナイフを取り出し無造作に投げる、それは転移を繰り返し、確実に相手の頭に突き刺さっていく。
「すげぇ・・・」
アルバートは驚愕するしか無かった、アキラの友人だから弱いということは無いとは思っていたが、アキラと違いイゾウは大人しく、戦闘訓練にも参加しない為に戦う姿を見るのは初めてだった。
「これぐらい、なんてことは無い。
それよりカルラを探すぞ、何かあってからでは遅いからな。」
「はい!」
アルバートとイゾウはカルラを探す為にビチャとの戦闘を開始した地点に戻るのだった。
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