第575話 水の大精霊
次にシモが向かったのは水の大精霊が住む、神聖な泉であった。
ここは世界最高の透明度を誇り、この泉の水は下流にある大聖堂で聖水として汲まれてるほどの神聖な物であった。
本来なら泉は人が立ち入ることを禁止された上で結界を張っているのだが、シモには関係無かった。
結界を刀で斬り中に侵入する。
「精霊さん、どこなのよ。シモが訪ねて来たのよ。」
シモは泉の前で声を出すが反応がない。
「うにゅ?シモは時間がないのよ、お話を聞いてほしいのよ。」
再び呼ぶも反応がない。
「にゅ・・・こういうときはおじいちゃん流、交渉術、物理で押し切るのよ!」
シモは刀を抜く。
「けんちゃん、お水を全部抜くのよ。
日本ではお池があれば水を抜くものらしいのよ。」
シモは日本にいたときテレビで見たものの影響を間違った方向で受けていた。
シモの期待に応えるべく、シモの刀けんちゃんは泉の水を吸収する。
聖水の原液ともいえる水を吸収することによってけんちゃんはさらなる高みに成長しているのだが、この時のシモは気づいてもいなかった。
「あなた!なんてことをするのよ!」
泉が半分ほど無くなった所で水の大精霊アクアが現れる。
「やっと出てきたのよ。お話を聞いてほしいのよ。」
「話を聞けですって!こんな真似をしておいて話を聞くと思っているの!」
「にゅ?聞いてくれないのよ?それならおじいちゃん流交渉術で交渉するしかなくなるのよ?」
「何よ、交渉術って!何か対価でも出すわけ?」
「うにゅ、命が惜しければ言うことを聞くのよ!」
シモは刀を向ける。
「はぁ?人が大精霊を脅すというの?
貴女、頭は大丈夫かしら?」
アクアはおかしな事を言い出したシモを心配そうに見る。
元々アクアは慈愛に満ちた精霊だった、正式な手続きを行えば協力してくれる可能性はあったのだ。
「にゅ!シモをバカにしているのよ!
シモはお姉さんで強い子だから、誰にも負けないのよ!」
シモの魔力が膨れ上がる。
そして、魔力は刀に注がれ・・・
「えっ、何この魔力、この子本当に人なの?」
「うにゅ!またバカにしているのよ!
そんな悪い子は細切れになるのよ!」
大精霊を捕獲するということを忘れて細切れにすることに集中し始める。
「ま、待って!そんな一撃喰らったら、私消滅しちゃう。」
「けんちゃんの糧になるのよ、桐谷流奥義!」
「待ったシモ!目的忘れてる。」
一緒に来ていたエーリヒがシモを止める。
「うにゅ?目的なのよ?」
シモは首を傾げる。
「僕達は大精霊を確保しに来たんだ、忘れたのか?」
「・・・はっ!お、おぼえているのよ。」
シモは覚えていると言うが明らかに動揺しており、忘れていたことは明白だった。
「水の大精霊さん、少し話を聞いてもらえますか?」
「わ、わかったわ、まずは話し合いましょう。」
アクアは震えながら、シモを止めてくれたエーリヒと話し合う。
「つまり、私にあなた達の拠点に移住して、魔力を提供しろと?」
「簡単に言うとそうなります。」
「嫌よ、なんで私がそんなことを・・・」
アクアが拒否しようとするがエーリヒはシモを指差す。
「あの子とまた戦いますか?」
エーリヒの言葉はアクアの心を折る。
アクアは大人しく連れて行かれるのだった。
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