第549話 モトキの妻
モトキの妻ワカナに日本政府から話が伝えられる。
「主人は助からないのですか?」
「こちらから出来ることはありません、そもそも、モトキ教授は犯罪を犯したのです。それをわかってもらいたい。」
「主人は留学にいっただけなんですよ、日本政府は留学に行った人を守ることもしないんですか!」
「奥さん落ち着いてください、理不尽な話なら抗議しますが、犯罪を犯した以上、政府は動かないし、動けません。
どうかご理解を。」
政府からの使者は伝えるだけ伝えて帰って行く。
ワカナは主人が死んでしまうと思うと居ても立っても居られなかった。
モトキが勤めていた、泥舟大学に赴き、モトキの救助のために声明を出してもらうように頼む。
「お願いします、主人を助けるために政府に、世間に声明を出してもらえませんか?」
「い、いや、我々としましては彼を助けるために行動は・・・」
「何故ですか!長年勤め上げて来たのに見捨てると言うんですか!」
「彼が詐欺と窃盗で捕まった事は世間に知られています、この事で若い世代からは異世界に行く機会を完全に無くしたと叩かれていますし。
そもそも、我が大学の教授が犯罪行為をしたことに様々な方々から叱責を受けてまして・・・」
ワカナの応対をする、学長は嫌そうな顔をしていた。
それもそのはず、学校はモトキが犯したと犯罪のせいで現在世間から叩かれている最中なのだ、今モトキを庇う声明を出そうものなら更に叩かれてしまう。
平身低頭謝り、時が過ぎるのを待つばかりなのだ。
「貴方達では話になりません!」
ワカナは学長室を出たあと、学校内で署名活動を行うが・・・
「なに?モトキを救う署名?
やめてくれよ、あんな教授いらね。」
「なっ!あなたは恩師にあたる主人を助ける気持ちはないんですか!」
「主人?あんたモトキの嫁さんなの?
うわっ、ないわぁ〜」
「人をバカにするのもいい加減にしてください!」
ワカナは学生からバカにされ、からかわれ、その都度怒りを振りまく事になる。
学生達からモトキの評価は元々低かった、自分の研究の為に学生を顎で使い、単位を盾に肉体労働に借り出し、少しでも逆らうと単位を取り消すという横暴な行為も多発しており、モトキの授業は取ってはいけない物になっていた。
「アイツのせいで学校の評判は地に落ちてんだ、どうしてくれるんだよ!」
「そうだ!内定取れなくなったらどうしてくれる!」
「こんな所で署名なんて集めても誰も書きはしねぇよ。さっさと帰れ!」
ワカナは学生達に追い出されるように学校をあとにするのだった。
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