第416話 ルクスとシリア

「うわっ、ルクス兄が女の人と抱き合っている!」

「オットーダメなのよ、恋路の邪魔をするとお馬さんに蹴られるのよ。

ここは見ないフリなのよ。」

「そんな事を言ってもシモも見てるじゃないか。」

「女の子は恋愛が好きなのよ。」

「野次馬だろ?」

「オットーは黙るのよ。」

シモとオットーが一応ソファーの影に隠れているつもりで抱き合うルクスとシリアを見ていた。


「二人とも、見るなら堂々としなさい。

あールクス、子供達の教育に悪いからそろそろこっちに戻ってこい。」

俺はルクスに声をかけ、二人の世界から呼び戻す。

「あっ・・・」

ルクスは気まずい表情を浮かべていた。


「あ、あのルクス様、こちらの方は?」

「ヨシノブだ、話に聞いているかも知れないが陛下が国王として対等に扱われているバカだ。」

「バカなのですか?」

「バカだ。」

ルクスは照れ隠しからか俺を卑下するように言う。

「バカとはひどいな、俺はヨシノブ、そこの婚約者を放置して遊び歩くひどい王子様の友人をやっているよ。」

「お、お前、その言い方はないだろ!」

「初対面の人にバカと紹介するお前が悪い。」

言い争っていると横から軽い笑い声が聞こえてきた。

俺とルクスが振り返ると、シリアが少しは笑っていたのだ。


「失礼しました、ですがルクス様が感情的になるのが面白くて。」

「恥ずかしい所を見せたな、ヨシノブが俺を悪く言うからつい。」

「それを言うならルクスが俺をバカにするからだろ?」

「なにを!」

「なんだ!」

「もうお止めください、二人が仲の良い事がわかりましたから。」

シリアは俺とルクスのやり取りを見て友人関係を感じたようだった。


「お二人のおかげで少し元気が出ました、山が火を噴いて以来、笑うことなどできませんでしたから・・・」

シリアの顔は一度笑ったあと、再び引き締まった表情に戻る。


「ルクス様、ズムの領民をお助けしていただけるのですか?」

「ああ、約束しよう、ヨシノブが入れば何とでもなる。

ズムを管理する者として俺達に行動する許可をもらえるか?」

「はい、兄レンがいない以上、私がビザ家の者として、ルクス様とヨシノブ様に全ての権限を委譲します。

どうか領民達をお助けください。」

シリアは深々頭を下げ、俺達に活動の自由を出すのだった。

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