第322話 王城
「ヨシノブ、どうなったのだ?」
城に戻るとカーム王が駆け寄ってくる。
「一応撃退しました、ところで王族のディゼルという方は知っていますか?」
「うむ、知ってはおるが・・・」
「ウーウという神に操られてこの襲撃を行っていたようですね。
残念ながら亡くなってしまいましたが。」
「何と、あの子が・・・してその遺体は?」
「神に結界の触媒に使われ・・・」
「うう・・・なんと不憫な・・・」
カームの目に涙が浮かぶ。
涙で声が出なくなったカームの代わりに、テメラリオ子爵が口を開く。
「ヨシノブ殿、城外の被害についてお話したい事が!」
「城外の被害ねぇ・・・甚大だよね。」
俺は目をそらす、ルーデルの爆弾の威力は凄まじく、草木は無くなり、大地はえぐれ、城壁が溶けているのが簡単にわかる。
「この被害に対しての補償を求めたい。」
「テメラリオ子爵!その件は問わないと話し合いが済んでおろう!ヨシノブ殿、失礼致した、誰かテメラリオ子爵を連れて行け!」
「ベレタ侯爵!我が国の為にも此処は訴えるべきですぞ!」
「早く連れて行け!」
テメラリオ子爵は衛兵に無理矢理連れて行かれる。
「ヨシノブ殿、失礼致した。決して我が国の意志ではないと言う事を伝えておきたい。」
「ええ、確かに被害が出てるのはわかりますから、復興支援には力を貸したいと思います。」
「かたじけない。」
ベレタ侯爵は頭を下げる。
「ヨシノブすまない、ワシが取り乱している間に我が国の者が失礼をした。」
カーム王も気を取り直し謝罪をしてくる。
「いえ、大丈夫です。戦闘の結果とはいえ、甚大な被害が出た事に違いはありませんから。
ただ、急遽出てきましたので一度戻ってからあらためて復興支援に参りたいと思います。」
「かたじけない。ヨシノブのお陰で我が国は救われたのだ。
ここにあらためて礼を言う。」
カームは礼を述べるとともに周囲の貴族達も頭を下げるのだった。
一方住人達は臨時基地に多数訪問に来ていた。
「ありがとうございます。」
「これを・・・」
「ヨシノブさんはどこに?」
住人達は自分達が渡せるものを感謝の印として差し出していた。
「大丈夫です。皆さんから報酬がもらいたくてやったわけではありませんから、それは今後のみなさんの為に使ってください。」
「おとうさんは今、お城で説明しに行ってますので今は留守です。
ご用事のある方はこちらに記入をお願いします。」
子供達は訪れる多数の人達の対応に追われている。
その中でも厄介だったのが・・・
「ヨシノブ殿の力に感動した、この私が仕えるに値する主君である。
仕官の取次を頼む。」
「あの・・・おとうさんは今留守でして、仕官の取次は後日で構いませんか?」
「ならば屋敷で待たせてもらおう。」
「すみません、屋敷の中は警備の都合上、立入禁止にしているのです。
せめて、おとうさんがいる時にしてください。」
「構わん、どうせ家臣になるのだ、屋敷で待つぐらい良いではないか。」
「困ります。」
男は受付を担当しているローザの静止を無視して屋敷の中に入ろうとするが・・・
「なんじゃ、お主?立入禁止と言われなんだか?」
門の向こうにアキラが酒呑童子を相手に酒盛りをしていた。
突如現れた来訪者にアキラが殺気をぶつけると男は固まり気を失うのだった。
「はぁ、またか・・・ロンメル足を持ってくれ。」
「エーリヒ、もう捨てておけよ、放置でいいだろ?」
「そうもいかないだろ、敵というわけでもないんだし。」
「エーリヒは真面目すぎるぞ。」
ロンメルは悪態をつきながらも男の足を持ち、中庭に用意した場所へ運び込む。
「またですか・・・もうこれで二十人ですよ。」
「俺達が悪い訳じゃない。」
「アキラさんの殺気に耐えれなくて士官なんてできる筈無いよね。」
気を失っている男達を見て、子供達はただ呆れるばかりであった。
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