第259話 タマと風呂

狐を連れたシモは家に帰ると一緒にお風呂に入る。

「タマも奇麗になるのよ〜」

「キューキュー」

タマは風呂から逃げようとするが、どれだけ早く動いてもシモに捕まる。

「ダメなのよ。ちゃんとキレイキレイしないとおとうさんに怒られるのよ。」

シモから伝わる迫力にタマは負け、大人しく洗われるのであった。


「シモ、狐かわいい。」

「リナ、この子はタマって言うのよ。」

「タマはかしこい、ちゃんと従う人をわかってる。」

シモに無理に逆らわないタマを賢いと認めていた。

「リナだけに見せてあげるのよ。タマ、ちっちゃい炎を出して。」

タマは言われるまま、拳大の炎を出す。

「シモ、これ普通の狐じゃない。」

「そうなのよ?これが普通じゃないのよ?」

シモは首を傾げつつ、狐を持ち上げる。持ち上げられた狐も首を傾げる。

するとシモがふと気付く・・・


「リナ!この子女の子なのよ!」

「驚く所はそこじゃない、普通じゃない事を気にするべき。」

「うにゅ?この子はシモの初めての子分なのよ。」

「キュー!」

「まあ、シモなら大丈夫だね。」

リナは狐と息があっている様子を見て安堵する。

これなら狐がシモに危害を加える事は無いだろう。


一方、神界ではトートが出した申請書が却下されていた。

「主神様!何で却下なんですか!」

「トートよ、考えてみよ、神を殺したような者を私の世界に必要だと思うか?」

「それでも、この世界で生まれた命です!責任を持つ必要があります。」

「神を手にかけたのだ、その罪は重い、ルールが命をかけて追放したのだ、トートはそれを覆す気か?」

「ですが!」

トートは上司に話を持っていくが無下に断られる。

その後も何度も訴えるも、承認を得ることが出来ていなかった。


「はぁ、ヨシノブさんに偉そうに言っちゃったけど、どうしよう・・・」

トートは頭を悩ませていた。

主神アーアは全く話を聞いてくれないのだ。

いつもなら合コンをエサにすれば、話ぐらいは聞いてくれるのに、この件に関しては全く話を聞いてくれない。

悩んでいる時にふと噂を聞くことになる。


ルールの親がウーウでこの件に関して主神に詰め寄り、怒りをあらわにしていると、同僚の中で噂が流れていた。


アーアはウーウに気を使い、この件に関しては触れるつもりがないのだと、それどころか新たに勇者を召喚してヨシノブを狙っていると。


噂を聞いたトートが調べてみるとたしかに勇者召喚が行われており、召喚された者もかなり改造されているようだった。


「何これ!力を与えすぎだよ、世界への影響なんて全く考えてないよ。」

トートが噂を調べた結果、勇者召喚は行われており、

トートより上位の神が全力で強化した勇者は、トートがヨシノブに与えた力よりかなり多く。


力を注がれ過ぎた勇者はいつ破裂してもおかしくないぐらいに魂が膨れ上がっており、魂が破裂して死ぬまでにどれほどの被害が出るか想像もつかなかった。

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