第87話 開店と思惑
「サリナさん・・・」
フィリアはサリナが苦手だった、父マルコスがヨシノブを刺したせいだと思うのだが、サリナはマルコス一家には冷たい対応をしているのは明らかだった。
しかし、事情を話さない訳にはいかなかった。
「却下です。
あなた方はヨシノブさんの言うことに逆らうのですか?」
とりつく島も無いとはこの事だろう。
ヨシノブさんなら話を聞いてくれると思うのだが・・・
フィリアは仕方なく店に帰る、父に報告するとマルコスは泣きそうな顔をしていた。
翌日、ヨシノブが店にやってきた。
「フィリアさん、昨日来てたんだって?ごめんよ留守にしてて、あと、これも取り扱ってくれるかな?」
クッキー等の日持ちする菓子を持ち込んできた。
「あ、あのこれは?」
「昨日、リーナ王女のお茶会に招待されてね、お菓子を振る舞ったんだけど好評だったんだ。
だから、せめて少しぐらいは売ってみようかと。」
・・・この人の交遊関係はどうなっているのだろう?
フィリアは冷や汗が流れる。
日本製のお菓子を取り扱っていいのか?
値段はどうする?
日持ちがするとはいえ、マルドラド王国からの輸送を考えると・・・
フィリアが頭を悩ませている所、
「来週にはマルドラド王国に帰るから、フィリアもついて来るなら準備しておいて。
でも、家を手伝うならそれでもいいから。」
ヨシノブは軽く言うと、そのまま帰って行った。
開店・・・
店は地獄絵図となる、
ドワーフ達が我先にとウイスキーを買い求める中、貴族の使者達も負けずと美容液や菓子を買い求める。
マルコス一家はフル操業で販売中につとめ、大量にあった商品は昼を待たずして完売となった。
残されたのは忙しさで魂が抜けたようなマルコス一家だった・・・
その頃、いずも艦内では、サリナが少し不機嫌そうにヨシノブと話していた。
「ヨシノブさん、なんでフィリアさんの一家を甘やかすのですか?」
「えっ?甘やかしてるつもりは無いよ。」
「でも、あの人達に店を預けて・・・あの人はヨシノブさんを刺したんですよ!」
「まあ、そうなんだけど。
だから、店を押し付けたんだよ?」
「えっ?」
「だって、ドワーフの相手疲れるし、
でも既存の店に卸して、ドワーフの皆さんが使われるような事も嫌だからね。
俺の息がかかった店が欲しかったんだ。
それに適正価格なんて俺にはわからないし、きっと高くても安くても恨まれるだろ?
それなら専門家に任せればいいかなと思ってね。」
「はあ?」
「今頃、忙しいんじゃないかな?
でも、これでマルドラド王国に帰れるよ。
サリナもルーカスさんに会いたいだろ?」
「ええ、会いたいのですがいいのですか?」
「もちろん、その為に店も用意して帰る準備をしたんだから。」
「ありがとうございます。」
サリナは嬉しそうに笑いかけるのだった。
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