第28話 暴挙

翌朝、ローラン王国軍は日が出たと同時に攻撃を開始する。

チースは結論が出ていなかったが現場の部隊長達は既に防衛戦の準備を整えていたため、すぐに対応する。


ここにラード防衛戦は始まったのである。


「防げ!奴らを町に入れるな!」

兵士達はラード出身の地元の者である。

他国の軍に城を落とされると待っているのは、大事な家族、友人達が陵辱される姿だ。

兵士達は必死に防衛する。


その姿に、ラードを拠点にしている冒険者達も防衛に加担しだした。

彼等も町の住人に恋人、友人がいる。

その者の為に剣をとるのであった。


本来、冒険者に戦争参加の義務はない。

これは戦争で冒険者が死んで、魔物が増えるのを防ぐ為でもあった。

しかし、ラードの冒険者は自らの意志で戦う事を選んだのであった。


そして、ルーカスも商会を上げて防衛に尽くす。

商会が抱える護衛、そして、武器を供出する。

これにより三千程度では簡単に落ちぬ町となっていた。


「くっ、本国に連絡しろ、増援を要請するのだ!」

ローラン王国、第八師団長ノズルは本国に連絡をする。


ノズルは真面目な男であった。

彼が受けた任務は如何なる手段を用いてもラードにいるヨシノブを捕まえて来いとの事であった。

その際、ヨシノブの反抗に備えて軍を連れていけと言われていた。

当初、ノズルは他国に軍を進める事の危険性に撤回を訴えたが、軍務大臣からの直接の命令が下り、進軍を開始したのである。


そして、命令の意味をマルドラド王国への侵攻と考えていた。

いくらなんでも一人の為に軍を差し向けるなど異常事態だ。

これはヨシノブ捕縛を名目にした、ラード侵攻と認識していた。

如何なる手段というところを重視した結果でもあった。


此処でも命令の意図がずれていたのである。


援軍要請の知らせを受けた王、及び軍務大臣は顔を青くする。

「アルメ!どういう事だ、軍の派遣は待てと命じたよな!」

「ええ、確かに停止を命じた筈なのですが・・・」

軍務大臣の命令は確かに回ってはいた、

だが、既に出発していたノズルの元には届いていなかった。

彼は真面目過ぎた為に日頃から何時でも動ける準備が出来ていた、その為、最初の命令を受けてすぐに出発していたのである。


「すぐに撤退させろ!マルドラド王国に謝罪の使者を出す。

カクタス侯爵、すぐにマルドラド王国に向かってくれ!」

「・・・かしこまりました。すぐに向かいましょう。」


カクタス侯爵はマインズ王国から帰ってきていた。

そして、次男イスマルが起こした事件を聞く。


アレクは寛大な処置のつもりだったが、オスカル・カクタスにとってはそうではなかった。

何故平民ごときの事で我が子が罰せられなくてはならん、と内心憤慨していた。


確かにスコール公爵の別邸に押し掛けたのは悪いと思っている、だが、それにしても罪が重すぎる。

イスマルが無期限の謹慎なら、事態の元凶たるヨシノブは打首か、奴隷にすべきと考えていた。


そして、王は何を血迷ったのかオスカルを外務大臣というだけで使者に選んでしまっていた・・・

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