第22話 御礼
ルーカスの屋敷に戻ったルイスは浮かれていた。
「ルイス、落ち着きなさい。」
ディーンが嗜めるが、浮かれるルイスは聞いていない。
「だってお兄様、見ました?私を助けるために颯爽と現れ、暴漢を薙ぎ倒し、剣を抜く者を相手に一歩動かずに倒してしまうのですよ!」
「あー見てたよ、だけどね、僕達は王族なんだ、もう少し冷静になってだね。」
「わかってないです!お兄様は女心がわかってないのです!」
ルイスが浮かれているのを見るのは楽しいが、あまり男に惚れ込むと後が辛くなる事を知っているディーンは複雑だった。
出来るものならルイスの恋心を叶えてやりたいが、王族の婚姻は政治が絡んでしまう。
一時の恋で済めばよいのだが・・・
ディーンの考えていることはルイスも気付いている。
浮かれる気分の中、自分の恋心がどうすれば叶うかを考えていた。
その点ではルイスはディーンの上をいっている。
自分が降嫁するには王族と平民という身分差が壁になるのがわかっていた、だが、ヨシノブの力を考えると父も取り込む事を考える筈、
幸い会う機会はある。
そして、まずは貴族になって貰わないと・・・
ルイスはディーンにバレないようにこっそりヨシノブに会いに来ていた。
「ヨシノブ様、先程助けていただいた御礼がしたいのですが宜しいでしょうか?」
「御礼なんていいよ、見返りが欲しくて助けた訳ではないし。」
「そんなこと言わないでください。
それに御礼も出来ない娘だと思われるのも辛いのですよ?」
目に涙を潤ませて見つめてくる。
「あーわかりました、泣かないでください。」
「ありがとうございます。」
ルイスは涙の使い方を熟知してる。
「それで何をくれるのかな?」
俺はルイスに付き合うことにした。
こんな小さい女の子がくれる物だ、たとえ肩たたき券だとしても笑顔で受けとるつもりだった。
「此方の短刀をお受け取りください。」
後ろに控える侍女が慌てる。
「姫様!」
「静かにしなさい。これは命令ですよ。」
ルイスの言葉に侍女は黙る。
この国では王族の男性が刃物を授ける時は直属の部下にすることを意味する。
では、女性が守り刀たる、短刀を授ける場合。
自身を好きにして構わないという、将来伴侶にする、婚約の意味合いが強かった。
「うん?これ大事なものではないの?」
俺は侍女の反応から受け取っていいか迷っていた。
侍女達も凄い勢いで頷いている。
「大事な物だからこそ、受け取って貰いたいのです。」
ルイスの真剣な目に押され、俺は短刀を受け取る。
俺としてはルイスが身の回りで一番良いものを渡して感謝を伝えようとしているとおもっていた。
受け取った瞬間、侍女達の泣きそうな顔が印象的だった。
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