第48話 支配後 6
——俺と爺さんが領域を支配してから二週間が経過した。
領域内で暮らす人々の数は二十人を超え、初期のメンバーをリーダーとして班ごとの活動を行うようになった。
早瀬の班は主に領域内の雑用や物の管理。最初リーダーは安田さんの奥さんにしてもらうつもりだったのだが、早瀬が立候補して流れでリーダーとなった。あいつ、戦いから逃げたかっただけだろ……。まあ、仕事は真面目にこなしているが。
魔石回収のリーダーは驚いた事に荻菜さんがやっている。彼女はかなりの美人でスタイルも良い。戦いに関してはそこまで強い訳ではないが、彼女目当ての男連中が集まり士気は高い。
怪我人も滅多に出ないし出ても軽症なので、俺もまあ良いか、と流している。
安田さんは俺の補佐件、周囲からの食糧や消耗品の回収班。
その安田さんは元消防士で、騒動の日も緊急で呼び出されたそうだ。だが彼は呼び出しを無視し家族を守る事を優先した。本人はその事に負い目を感じているようだが、今は家族を選んで正解だったと語っていた。
爺さんはそれぞれの班をフラフラと回っている。たまに俺は稽古をつけてもらっているが、好きにして構わないと言ってある。ただアカグロとの戦いの後、何か物足りないとは言っていた。
少人数だが、うまく回り始めた領域運営。その一方でダンジョン発見については思ったようには行かなかった。一番近いダンジョン化した施設は徒歩で片道一時間の区役所。行きは良いとしても、ゴブリン達と戦った後の帰りに一時間の移動は辛いだろう。
実際に俺と爺さんが付いて何回か向かったが、他の人達は体力の問題であまり良い結果は残せなかった。何故か荻菜さんだけは頑張っていたが。
そうして俺の出した結論。それは——このスーパーから離れ、もっと恵まれた条件の場所に拠点を移す事だった。
恐らく大型の施設が密集した場所なら、複数のスーパー、宿泊施設、魔石用のダンジョン化した施設、の条件が揃っている場所がある筈だ。
このような新潟市の端では施設が離れていて難しい。だが、新潟駅周辺で施設が密集した場所なら可能性が有る。移動先は……新潟市の中央区だ。
そして俺はこの考えを初期のメンバーに話した。それぞれの意見も聞いてみたのだが、爺さん、早瀬、荻菜さんは俺に従うようだった。
……だが安田さんはここに留まる事を希望した。自身の家も有りこの地域に愛着も有ると。勿論命令であれば従うらしいが、一つの意見として参考にしてほしいそうだ。
俺はその場を解散とし、結論を翌日へと持ち越した。
一人になり、俺は今の領域をどうするかを考えていた。
仮にこの領域を生かしたままにするので有れば、誰かをここに置き侵入許可などの権限を渡した上で管理させる必要が有る。それを任せられるのは安田さんだろうか。
元々ここは集団を組織する練習のつもりだった。それで残りたい者が居るのなら、それで良いのかもしれない。見捨てるように思われるかもしれないが、本人達の希望に従ったまでだ。
「決めた。中央区へ向かうのは少人数。ここは安田さん夫妻に任せよう」
問題は多いが、後は安田さん達に任せる。俺はそう答えを出した事で考えるのをやめた。
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