第36話 支配領域 9 そして再攻略へ

 それから数日、俺はひたすら銃の検証を行なっていた。そして、やっと妥協出来る所までの威力を出す事に成功した。


 単発の威力が有るのは、『威力』と『弾肥大ラージバレット』だった。単純に弾が大きければそれだけ重さがあり、衝撃が大きくなるからだろう。

 本来なら弾が重くなればそれだけ運動エネルギーが落ちるんだろうが、俺の『武器作成』による特性は、それらを全て無視してしまうので単純に威力が上がるだけのようだ。


 それともう一つ作成した銃。それは、『威力』と『連射ラピッドファイア』を付与したもの。

 『連射』を付与する事で、引き金を一回引くと弾が五発全てが発射される。流石にタイムラグは有るが、一秒間で五発全て発射される程の速さ。

 コンクリートの壁で試したが、『弾肥大』の一発より、『連射』五発の方が結果的に削る量は多かった。


 アカグロではどうなるかは分からないが、この二種類を二丁ずつ持ち俺は戦いに臨む事にした。



 そしてこの数日、検証だけを行なっていた訳では無い。俺と爺さんで手分けして、ひたすら魔石を集めていた。これは、『修復』での弾補充で多量の魔石を使う事が考えられたからだ。


 俺のリュックには袋に小分けされた魔石の山が敷き詰められている。これを全て使ってでも、アカグロを倒し切るつもりだ。




 そして、スーパーへの再挑戦の為に自宅の玄関をでた俺達。俺は無言だった爺さんに声をかけた。


「それじゃ、アカグロを倒しに行くか」


「この数日……待ちくたびれたぞ」


 爺さんは既に気持ちを切り替えたのか、目が鋭いものになっていた。アカグロほどとは言わないが、その威圧感はかなりのものだ。


「……流石に本気に切り替えるにはまだ早くないか」


 俺のそんな呟きは爺さんに聞こえた筈だが、爺さんはそれが聞こえなかったかのように先を歩き始めた。


 



 そうして俺達は駐車場前へ着くも、既に俺は疲れ切っていた。リュックに魔石を詰め込み過ぎたせいで、重い。身体能力は上がっている筈なのに、とにかく重い。ゴブリンや犬は爺さんが対応してくれたが、移動だけで体力を思った以上に消費する。


 リュックを一度下ろし、その場に座り込む俺。爺さんはそれを見て笑っている。


「用心深いのは良いが、流石に欲張り過ぎじゃのう」


「はあ……でも、魔石が足りずに逃げ帰る事になったら後悔しきれないんだよ。それに、爺さんが少し持ってくれても良いんだぞ?」

 

「そんな重いものを儂に?灰間の小僧、老人は労わるもんじゃ」


「こんな時だけ老人ぶるなよ……」


「仕方ないのう。駐車場のゴブリン共は儂が蹴散らしてくるとするか」


「そうしてくれると助かる」


 爺さんは刀と短刀を手に、駐車場のエリアへと入っていく。俺はいつでも対応出来るよう刀だけ準備しつつ、体力の回復に努めた。


 そして、暫くしてから爺さんがゆっくりと戻って来る。


「入り口付近までは安全にしておいたぞ」


「流石に早いな。爺さん助かったよ」


 そう言って俺はまた重たいリュックを担ぎ、スーパーへの入り口へと歩いていく。


 そうして、スーパーの入り口の渦の前まで到着した俺達。


 爺さんには既に作戦の内容は話して有り、中に入ったら状況を整える。アカグロが移動する可能性もある為、出来る限り速やかに行いたい。


「爺さん。作戦は忘れて無いよな?」


「勿論じゃ。まずはスーパーの方のゴブリン共を殲滅。そして小僧が魔石の袋を要所に置く」


「そうだ。アカグロをそこに誘い込み、狭い通路とオブジェクト化した商品棚を利用して有利に戦いを進める。あの狭い通路じゃ、あの大鉈は満足に振れないだろう」


 爺さんはそれを聞いて頷く。


「もし俺が狙われた場合、決められたルートで逃げ回る。爺さんは先回りして、俺とアカグロの間に入り俺が攻撃する時間を稼ぐ」


「上手くいけば良いがのう……」


「そういうのはやめろよ。それはフラグってヤツだ」


 爺さんは俺の言ったことが分からないようで首を傾げる。まあ……それは良い。俺がやられない限りは、有利に進められる筈だ。


「よし、行くか」


 俺と爺さんは渦の中へと足を踏み入れる。


 俺達は必ずアカグロを倒してここを攻略する。

 そうする事で、この世界を生き抜く為の何かが分かる——俺は何故かそんな気がしていた。

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