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ヒサシは弟の同級生リョウの車でコンビニの深夜バイトに向かっていた。
リョウを呼び出し迎えに来させたヒサシはある事を頼んだ。
「今日は俺と一緒にいた事にしてくれ」
なんとも意味ありげなヒサシのその言葉に、リョウは不審がりつつも了承した。
車中のラジオで今朝起きた殺人事件のニュースが流れる。
腹部を刺され刺殺された遺体、どうやら身元が割れたらしい。
ニュースの途中でリョウがおもむろにラジオのチャンネルを変える。どことなく動揺しているようにも見える。
ヒサシはそんなことよりも、自分の人生の下らなさを振り返っている。
生まれてきた意味、生きている意味も見つからない人生で、何か行動を起こしてみればと期待していたが、何も変わらなかったことに酷く落胆していた。
自分の存在意義、ときたま振るう他者への暴力はその最たるものか、力の誇示としては存在を示せるが優越に浸るような事でもなかった。
その暴力仲間のでもあるリョウの後輩、ワタルが今日酔っ払いに殴りかかられたという話をヒサシは聞く。
自分たちは日常的な暴力を享受して生きているのだから、そのぐらいで文句を言うなとヒサシはワタルに言ってやりたい気分だった。
バイト先に着くとヒサシはリョウに送迎のお礼としてビールとタバコを買って渡した。
ビールとタバコの代金はこのコンビニで盗撮カメラを仕掛けた客から奪い取った財布で払った。その親父の盗撮行為に腹が立ったわけでもなく、ヒサシに対して不遜な態度をとったことで腹がたった。
ただボコボコにするだけでは物足らず、盗撮をネタにユスれるだけゆすろうとヒサシは考えていた。
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